本研究では,研究期間全体を通して,変動の主観的リスクを評価する方法の開発,多段決定問題の代表的解法である強化学習の改良,および,変動を含む現実問題の解法についての研究を行い,以下の成果を得た. 多段決定問題において,とりうる選択肢が確率的に変動する問題を対象とし,その変動の発生確率に基づく主観的リスクを評価する方法と,変動発生確率と変動に起因する損失の2面に着目して主観的にリスクを評価する方法とを開発した. 強化学習は,多段決定問題における意思決定法を獲得する方法である.上述の方法で評価したリスクを考慮して意思決定を行う強化学習法を考案した.また,変動が発生する前に獲得した意思決定法を,変動後にも適切に利用することにより,変動発生後の意思決定を高速化する方法を開発した.さらに,最終年度では,複数の意思決定機構を用意し,変動に応じてそれらを適切に切換えて使用することにより,変動に適切に対処できる機構と,その自動作成方法とを開発した.この成果は国際会議で発表した他,さらに顕著な変動がある場合への拡張を行い,2015年度に国際会議で発表する予定である. また,現実問題では,主として,電力系統に接続された太陽光発電装置の出力の変動に着目した.この変動による悪影響を抑制できる配電系統運用構成の最適決定法を開発した.最終年度においては,太陽光発電装置の配電系統内の設置場所と設備容量とを,配電系統に課せられた制約および太陽光発電出力の変動によるリスクを考慮しながら,経済的に最適に決定する方法を考案した.この成果は2015年度に国際会議で発表する予定である.また,太陽光発電装置の変動に対処できる蓄電装置の最適な運用計画を,多段決定問題と捉え,これを解くことによって計画を作成する手法を開発した.
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