研究課題/領域番号 |
24560505
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
出口 光一郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (30107544)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センシング情報学 / グローカルセンシング / センサネットワーク / 大量画像データ / ネットワークグラフ / 能動センシン グ / 画像物体認識システム / 多分解 能動的システム |
研究概要 |
本研究の目標は,大規模・複雑化した系のグローバルな状態情報を,ローカルなセンシングによって獲得する方法論を確立することにある.現実の大規模・複雑系でのセンシングをローカルな計測で実現するためには,まず第一に,対象内での情報の流れの構造を的確に,かつ,効率的にモデル化する新しい体系が不可欠である.次に,各ローカルなセンシングによって,どれだけのグローバル情報を獲得できるのかの定量化が必要である. 本研究では,(1)大規模系の情報の流れの構造をグラフを用いてモデル化する手法の確立をするともに,(2)そのグラフ内の実際の情報の流れを,申請者が開拓,提唱し,確立してきた「センシング情報学」に基づいて定量化する手法を示し,(3)それらに基づいて,具体的な大規模なシステムに対して,ローカルなセンシングによってシステムの大域的でグローバルな状態情報を獲得する例を提示する. 24年度は、東日本大震災関連の被災と復興に関する広域での都市部の画像データの収集を行ってきた.こうして得た大規模時空間画像列を元に,市街地を時空間的にモデリングする方法を研究した.市街地の幾何学的,地理学的な変化そのものを可視化すると同時に,変化の意味を理解することが目標である.すなわち,街のどこがどのような被害を受け変わってしまったのか,何を失ったのか,そして,そこからどのように何が復旧,復興してきたのかを少数の観察から捉える方法を検討してきた. この研究では,コンピュータビジョンの手法を用い,画像から市街地の変化を意味的に理解しようとする.これらはリモートセンシングなどによる上空視点情報のみを用いた「空間形状計測」では実現できない.例えば,どの場所でどのような建物が破壊され失われたか,復興の過程では建築物の完成状況から,経済活動の盛んさと人や物資の動きに至るまで,それらのそれぞれを定量的に捉えたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)大規模系の情報の流れの構造をグラフを用いてモデル化する手法の確立と,(2)そのグラフ内の実際の情報の流れを,申請者が開拓,提唱し,確立してきた「センシング情報学」に基づいて定量化する手法を示し,(3)具体的な大規模なシステムに対して,ローカルなセンシングによってシステムの大域的でグローバルな状態情報を獲得する適用例を提示する. 24年度は,東日本大震災関連の被災と復興に関する東日本沿岸部の500㎞にわたる広域での都市部の画像データの収集を,1年間を通して行ってきた.そのデータ量は,30テラバイトに及んでいる.収集すべきデータが広範囲におよび,また,想定をはるかに上回る大規模データとなったため,データ収集の期間を当初計画より延長するとともに,解析手法,ソフトウェア構成,システムの設計を見直し,作成を次年度からやり直すこととした.しかし,実績としての研究成果は上がっており,都市部での被災と復興の時間的・空間的な変化を構造的にとらえて可視化をしてきた.すでに,多くの場で成果の発表をしてきており,その結果,研究の方向として,一定の評価を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
25年度からは,大規模画像データベース検索システムの構築と可視化手法の確立を行うことで、都市のローカル構造とグローバル状態の関連の解析を行う.平成25年12月まで,東北地方沿岸の都市部での画像データの収集を引き続き行い,並行して開発する解析手法を適用することで有効性を確認する.また,平成26年3月までに、解析ソフトウェアとシステムを作成して、ローカルなセンシングによるグローバルな状態計測の典型例(プラットフォーム)を構成する. 26年度は,計測対象とする都市部のグローバル状態の範囲を拡張し,本研究で目標としているグローバルセンシングのための手法の有効性,有用性を確認し,研究のまとめを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は,物品費として,ソフトウェアの購入費と,データ記録用の大容量ハードディスク,データ交換用のネットワーク機器およびデータ記録媒体の購入を計上する.内容は,科学計算ソフト,画像処理・表示ソフト,各約10万円×4セット,大容量ハードディスク(30テラバイト)約50万円,その他10万円である. 旅費は,成果発表と研究打ち合わせ(東京、25千円×12名・回),調査・データ収集(東北地方沿岸部、25千円×12名・回)のためのものである. 人件費・謝金として,データ収集補助(10千円×20名・日)を計上する.
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