研究課題/領域番号 |
24560512
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
荒川 貴博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 講師 (50409637)
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キーワード | イメージングシステム / 酵素 / 可視化 / エタノールガス / デバイス / 流体 |
研究概要 |
本研究の目的は、生体由来ガスに含まれる揮発性化学情報を高感度かつ選択的に画像化する技術を構築することである。前年度の①酵素固定化メッシュでのルミノール発光を利用した生体ガスイメージングシステムの構築、②掌での生体ガス成分イメージングによる放出動態、濃度分布の評価を基盤技術として、当該年度では、③ppbオーダーでの生体ガス成分のイメージングシステムの実現のための高感度化への展開と、④マイクロ流体システムとバイオセンサを融合したイメージングシステムの構築に関する基礎検討を行った。なお対象成分として、取扱の容易なエタノールガスを計測対象として利用している。 生体由来ガスのイメージング方法として、生体触媒を利用した化学発光による手法を用いてシステムの構築を行った。化学発光に必要な酵素を、酵素固定化膜を作製し、その化学発光を高感度に撮影するCCDカメラにて匂い情報を可視化するシステムを構築している。これを改良することにより、標準エタノールガスを用いて、高感度化を行った。発光の増感効果のあるエオシンYである色素系の増感剤の検討、ルミノール発光の生体触媒である大豆由来(SBP)、パームヤシ由来(PTP)のそれぞれのペルオキシターゼについての検討、発光強度の増強効果について評価をおこなった。増感剤を利用することで、発光強度を10倍程度まで増加させることができ、数百ppbであれば計測可能であることが示された。大豆由来のペルオキシターゼでは発光強度の向上は確認されなかった。さらに、電子増倍型CCDカメラや光学系の改良よりを行うことで、感度および解像度の優れた可視化法が可能となった。④については基礎検討を進めており、流体デバイスの作製と、酵素膜の固定化方法について検討を行った。 以上のように、当該年度に予定していた③と④の研究目的を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、以下の2つの項目についての研究を中心に進めてきた。 ③ppbオーダーでの生体ガス成分のイメージングシステムの実現のための高感度化への展開 生体由来ガスのイメージング方法として、生体触媒を利用した化学発光による手法を用いてシステムの構築を行い、高感度計測について検討を行った。具体的には、発光の増感効果のあるエオシンYである色素系の増感剤の検討、ルミノール発光の生体触媒である大豆由来(SBP)、パームヤシ由来(PTP)のそれぞれのペルオキシターゼについての検討、発光強度の増強効果について評価をおこなった。増感剤を利用することで、発光強度を10倍程度まで増加させることができ、数百ppbであれば計測可能であることが示された。大豆由来のペルオキシターゼでは発光強度の向上は確認されなかった。さらに、電子増倍型CCDカメラや光学系の改良よりを行うことで、感度および解像度の優れた可視化法が可能となった。バイオセンシングを用いたガス成分の可視化計測及び高感度計測に関しては、概ね順調に進展している。 ④マイクロ流体システムとバイオセンサを融合したイメージングシステムの構築の基礎検討 マイクロ流体システムとバイオセンサを融合したイメージングシステムの基礎検討を進めており、流体デバイスの作製と、酵素膜の固定化方法について検討を行った。流体デバイスを利用した温度管理や試薬循環によりタンパク質の機能の維持を目的としたマイクロ流体システムとの融合について検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
・マイクロ流体システムとバイオセンサを融合したイメージングシステムへの展開 生体触媒である酵素を利用したイメージングでは、分子認識機能はタンパク質の熱変性、長時間使用、反応生成物の影響により機能が低下、失活してしまう影響がある。そこで温度管理や試薬循環によりタンパク質の機能の維持を目的としたマイクロ流体システムとの融合について検討を行う。酵素ドットパターンを作製した面に拡散により試薬やバッファを供給できるような並列マイクロ流路とイメージングセンサを一体とした系を構築する(図7)。評価実験としては、アルコール飲料を経口摂取後、皮膚ガスに含まれるアルコールガスの長時間計測を行い、システムの安定性について評価する。 ・バイオイメージングシステムを用いた疾患スクリーニングへの応用 要素技術を集積化して、疾患由来の生体ガスのバイオイメージングシステムの構築を目指して検討を進める。具体的な疾患由来成分についても対象を絞り、疾患スクリーニングに向けた検討を行う予定である。生体由来の成分計測のため、高感度計測についても引き続き検討を行う。 バイオイメージングの際に利用する生化学実験用試薬を中心に研究費を使用していく計画である。酵素は高価であり、また、生体ガス成分の検出・観察には主に光学的手法を用いるので、光学系の改良と構築のための光学部品も研究遂行に不可欠である。
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次年度の研究費の使用計画 |
発光に使用する生化学試薬は、購入後速やかに使用した方が良いため、実験系を構築後に購入することが重要である。そのため、実験系が完成されていない状況では、試薬の購入を行いませんでした。光学系に使用する装置も購入予定であったが、販売が延期されたため、購入を見送ることとなりました。 バイオイメージングの際に利用する生化学実験用試薬を中心に研究費を使用していく計画である。酵素は高価であり、また、生体ガス成分の検出・観察には主に光学的手法を用いるので、光学系の改良と構築のための光学部品も研究遂行に不可欠である。 また、本研究を遂行するに当たり、本研究の研究成果を社会・国民に発信するため、最新の研究成果に関する情報を収集するため、国内外への研究会・学会・展示会への参加、発表を予定している。
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