研究課題/領域番号 |
24560517
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
飯山 宏一 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90202837)
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キーワード | 光計測 / FMCW / 光距離計測 / 三次元計測 / 光周波数掃引 |
研究概要 |
レーザ光源の光周波数掃引による光距離センサにおいて、空間分解能と測定精度の向上と、物体形状計測に関する研究を行った。本システムは、参照光と測定物体からの反射光の干渉信号を周波数解析することにより距離を求める方法である。本システムでは光周波数を時間に対して完全に線形に掃引することが不可欠であるが、実際には光周波数掃引に残存する非線形性のために、空間分解能および測定精度が大きく劣化する。そこで本研究では、補助干渉計を設けて、その干渉信号よりサンプリング信号を生成し、実際のセンシング信号をサンプルしFFT解析を行った。 サンプルした干渉信号のデータ点数は有限であるが、サンプル点にゼロ信号を追加し、かつ、FFT解析後の信号のピーク補間により正確な距離を求めるアルゴリズムを改良した。さらに、光周波数掃引において光周波数が高くなるときと低くなるときで外乱の影響により測定距離が異なることを明らかにし、その補正を行った。その結果、1000回測定において30μmの標準偏差で測定できることを示した。 また、レーザ光をビームスキャナで2次元的にスキャンすることで、物体の形状を測定するシステムを構築した。レーザ光を測定対象上に焦点を当てることにより横方向の分解能を高め、かつ、荒れた表面から散乱される微弱な信号光の受光を可能とした。さらに、レーザ光をスキャンすると測定距離が実際より長く測定されるため、プログラムでその補正を行った。その結果、1mm以下の段差の測定が可能となり、シャープペンシルの芯の形状計測が可能であるとの予備測定結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画は、(1)光周波数掃引の非線形性の影響をキャンセルし、高い測定再現性を得ること、(2)物体形状計測システムを構築すること、の2点が目標であった。 (1)については、補助干渉計を設けてサンプリング信号を生成するシステムことにより、標準偏差30μmでの距離測定が可能である結果を得ている。また、本システムを用いないときの距離測定の標準偏差はミリメートルオーダーであることから、目標は十分達成している。さらに、本システムでは光源の光周波数を三角波状に周期的に掃引するが、光周波数が高くなるときと低くなるときの測定距離の差異を明らかにして、より信頼度の高いシステムを構築していることから、目的は十分達成している。 (2)については、レーザ光をスキャンする方法を採用し、レーザ光が斜めに照射されることによる測定距離の補正と微弱な信号光受光が可能となるシステムを構築し、1mm以下の段差の測定が可能であることを示しており、目標は十分達成している。
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今後の研究の推進方策 |
光学系の最適化および測定アルゴリズムの改良により、(1)測定精度の向上、(2)三次元形状測定、を行う。 (1)については、測定距離を短くすることにより達成が可能である。また、測定光学系が振動などの外乱を受けることにより測定精度が劣化するので、外乱を減らすための防振化などをにより、測定精度(標準偏差)10μmを目指す。それにより、100μm程度以下の微小な段差の測定を可能とする。 (2)については、引き続きレーザ光の空間的スキャンによる物体の2次元形状計測を行う。測定対象として、工作機械により階段状に切削加工された金属板(段差は0.1mm~1mm)やシャープペンシルの芯などを用い、ビームスキャナで測定対象へのレーザ光照射位置をスキャンし、物体の形状計測を行う。また、レーザ光の集光と空間的スキャンは採用せず、測定対象にレーザ光を面で照射し、受光器に光検出器アレイを採用することにより、一度の測定で物体形状計測を可能とするシステムを構築する。現在、1個の光検出器を横方向に移動することにより物体形状計測が可能であるとの結果を得ており、実現性は高い。
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