光周波数を掃引したレーザを光源に用いるFMCW方式の光距離センサにおいて、空間分解能および測定精度の向上と、物体形状計測に関する研究を行った。本システムは、参照光と測定物体からの反射光の干渉信号を周波数解析することにより距離を測定する方法である。本システムでは光周波数を時間に対して完全に線形に掃引することが不可欠であるが、実際には光周波数掃引に残存する非線形性のために、空間分解能および測定制度が大きく劣化する。そこで本研究では、補助干渉計を設けて、その干渉信号よりサンプリング信号を生成し、実際のセンシング信号をサンプルしFFT解析を行った。 サンプルした干渉信号のデータ点数は有限であるが、サンプル点にゼロ信号を追加し、かつ、FFT解析後の信号のピーク補間により正確な距離を求めるアルゴリズムを採用した。さらに、光周波数掃引において光周波数が上昇するときと低下するときで外乱の影響により測定距離が異なることを明らかにし、その補正を行った。その結果、1000回測定において30μmの標準偏差で測定できることを示した。 また、レーザ光をビームスキャナで2次元的にスキャンすることで、物体の形状を測定するシステムを構築した。レーザ光を測定対象上で集光することで横方向の分解能を高め、かつ、荒れた表面から散乱される微弱な信号光の受光を可能とした。さらに、レーザ光のスキャンにより測定距離が実際より長く測定されるため、プログラムでその補正を行った。その結果、100円硬貨(刻印の段差150μm)や1円硬貨(刻印の段差60μm)などの、1mm以下の段差形状の計測が可能であることを示した。 さらに、レーザ光を集光せずに大きなビーム径で測定対象に照射し、光検出器アレイで干渉信号の空間分布を測定するシステムも開発し、並列測定が可能で測定時間の短縮が可能であることも示した。
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