研究課題/領域番号 |
24560520
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小島 史男 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環, 教授 (70234763)
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研究分担者 |
中本 裕之 神戸大学, システム情報学研究科, 助教 (30470256)
宇佐美 照夫 京都学園大学, 経済学部, 教授 (60456746)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計測工学 / 非破壊検査 / 構造物健全性 / 経年劣化 / 金属疲労 / 磁性 / 信号処理 / 診断 |
研究概要 |
研究初年度においては、磁気センサ単体による構造物機能劣化モニタリングの基本性能の確認を下記の手順で実施した。先行研究においては、鋼材の磁気特性と材質劣化に相関があることが明らかになっている。一方で,鋼材の磁気特性は材質により,同一な材質においても加工履歴等により異なる磁気特性を持つことが予想される。そこで、鋼材の劣化要因を歪に限定して、引張による均一な歪みを生じさせた鋼材を用意し,磁気特性との相関を確認することとした。 試験体母材として一般構造用圧延鋼材の平板を用意し,これに引張を加えることで試験体を作成した。均一な歪が生じた試験体であることを保障するために、引張による歪は,母材中央に配置した歪ゲージで管理した。母材が既定の歪に達した後,母材の切り出しを行い、測定試験体とした。また鋼材の劣化を非破壊的に計測するセンサとして,励磁コイルと検出コイルを巻いた積層珪素鋼板による馬蹄型のカットコアを用いた。 励磁コイルに低周波励磁電流を流し,電流プローブでモニタした。検出コイルの出力をA/D変換器を通して計測した。試験体である一般構造用圧延鋼材の保磁力は,カットコアを構成する珪素鋼と比較して十分に大きいことから、試験体の保磁力を超える磁界がカットコアによって供給されることで,検出コイルにより試験体の磁区の急激な変化を捉えることが可能となる。磁区構造の急激な変化のパワーを定量評価することで、鋼材の歪みを非破壊的に計測する可能性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先行研究においては、鋼材の磁気特性と材質劣化に相関があることが明らかになっているが、これを非破壊診断に実機適用するには、測定方法の標準化が求められる。研究初年度においては、厳密な評価体系を構成する上で基本となる試験体の作成方法を確立することができた。同時に参照用試験体での計測結果から磁区構造の変化を定量的に評価できたことは予想を超える成果といえる。 次年度以降、計測条件,試験体形状のパラメータを増やすことで,他の磁気特性に着目した実験を行うことにより,歪みが磁気特性に与える影響を明確にすることが期待でき、磁気特性を用いた非破壊的な材料診断手法の実機適用を目指す準備が整ったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究次年度においては、材料の経年劣化を模擬するために、研究初年度で準備した劣化プロセス再現試験体を用いて材料劣化進展に関する検出性能の評価を行う。継続監視においては、劣化レベルに応じて、同じセンサで次元の異なるサイジングが必要となる。そこで使用する監視装置の較正に関する技術課題を抽出し、環境適応試験を実施する。研究初年度における知見と併せて、データマイニング手法を用いて高感度なパラメータを発見的に求めることにより問題解決の糸口をみつける予定である。 さらに研究3年目においては、センサネットワークとシミュレーションとの併用による構造物機能劣化評価法の確立にむけた取り組みを実施する。劣化診断を実現するには、さまざまな劣化プロセスに関する測定データを参照データとして利用する方法が考えられるが、実験により参照データをつくることは自由度が低く実用的とはいえない。そこで、測定時にオンラインでシミュレーションデータと照合できるような検査システムを構築するために、有限要素モデルを用いた劣化進展情報と検査データに関するデータベースを構築する。さらに最新のデータマイニング手法を導入することにより、構築されたデータベースと連動した材料劣化進展モデルを作成し、オンラインで自由度の高い劣化進展予測アルゴリズムの開発を実施する。 研究最終年度においては、実証試験による状態監視技術への適用可能性について検証し、オンラインで構造物の供用履歴にもとづく機能劣化を監視するシステムの確立に向けた基礎研究を展開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究次年度においては、研究初年度の研究実施項目の達成度について確認を行い、材料システムの経年劣化による状態変動・異常情報をモニタリングシステムの実現可能性について検証し、オンラインで構造物の供用履歴にもとづく機能劣化を監視するシステムの確立に向けた基礎研究を展開することとしている。研究初年度において目標をこえる成果がでたことから、この成果を次年度の早い段階でいち早く海外に向けて公表することとし、そのための旅費を基金化した。これにより、当初予定されていた次年度における定点監視のための技術課題の抽出と問題解決に関わる研究を加速させ、計測条件,試験体形状のパラメータを増やすことで,監視装置の較正に関する技術課題を抽出し、環境適応試験を実施し、データマイニング手法を用いて高感度なパラメータを発見的に求める診断技術の確立を着実なものとする予定である。
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