研究課題/領域番号 |
24560521
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
横田 正幸 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (80323335)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ディジタルホログラフィ / 内視鏡 / 形状計測 |
研究概要 |
24年度は多波長ディジタルホログラフィによる内視鏡システムの基礎部分の構築を主に,POFイメージガイドによるホログラム伝送の適用可能性検討,GPGPUによるデータ解析の高性能・高速化を実施した.内視鏡システムの基礎部分に関しては,2種類の半導体レーザを光源として,注入電流値をステップ状に切り替えて4波長を生成する変調信号を作成し,D/A変換器よりこの変調信号を出力して多波長(今年度は4波長)による位相シフトホログラム記録システムを構築した.このシステムを用いた実験により,銅パイプ(内径14mm)内にスペーサを取り付けた円錐鏡を挿入しこれを走査することで,緑青,傷,穴,凹凸等の検出と形状測定を行った.この結果よりパイプ内の欠陥検出が可能であることが確かめられ,当初目標であった基礎実験系の構築は達成できた. また,実験データの新たな解析法として,得られたパイプ内の表面形状結果から銅パイプ内に挿入した円錐鏡の位置ずれ量を自動的に検出し,円錐鏡位置ずれにより実験結果に重畳される誤差を補正するソフトを開発し,従来の補正方法よりも計算時間で500分の1以下にできた.この結果より実時間結果表示への可能性が大きく開けた. さらに要素技術として,POFイメージガイドを用いたホログラム伝送の研究も同時に行った.従来のPOFでは解像度が足りないが,新しく開発された高解像度タイプのPOF(13000画素)を用いることで,再生像の空間分解能を向上できることが確かめられた. 以上に加えて,もう一つの要素技術として,データ取得と解析をさらに高度化・高速化するためにGPGPUの基礎研究も開始した.成果としては,ホログラムの高速再生及び高速結果表示を行うソフトを作成した.まだ,高速結果表示部分に課題があるが,これを解決し,測定結果の実時間表示へつなげる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多波長ディジタルホログラフィによる計測システムの基礎部分である光学系の構築ができ,測定原理も銅パイプを用いた実験により確認できた.赤色以外のレーザーの使用に関しては,実験系にはまだ導入していないが,準備中であり随時導入予定である.また,測定データの信号処理部分に関しては,円錐鏡位置ずれ自動補正化が実現できたので,測定結果解析では大きな進展が得られている.今後,GPU等を用いて更なる高速化が図れれば,実時間結果表示を達成できる見込みがついたと考えている. 次に要素技術であるPOFイメージガイドを用いたホログラム伝送と計測への応用研究も同時に進行させ,高解像度型POFイメージガイドによる実験検証を行う段階まで来ている.この結果より,イメージガイドの導入可否が決定できるため,25年度中には最終的な内視鏡の構成が決定できる見込みである. また,測定結果表示を実時間で行うためのGPGPU導入も当初予定よりも前倒しで基礎研究に取り組み,結果表示部分の基本ソフトが完成している.今後,上記で確立した円錐鏡位置ずれ誤差の自動補正部分を取り込んたソフトを開発し,さらに改良を続けて内視鏡システムの完成に間に合わせる予定である.この点においても当初計画より進んでいると考えられる.以上から,計画全体を展望するとおおむね順調に推移していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
24年度で得られた実験的な知見を基にして内視鏡用のセンシングヘッドの試作を行い,これを用いた直管に対する実験に着手する.はじめは小型CCDをヘッド内に取り込む形で作成し,初期型として,内径30~40mm程度のパイプに適合したヘッドとする.このセンシングヘッドの構成決定と実験による検証を今年度の基盤とする.この場合に,光源には緑色レーザも加えて赤,緑の4波長程度の構成とする.光源に関して,青色レーザと赤外レーザに関しては,導入のための基礎的な知見を得るための準備を始める.ただし,青色レーザに関してはコヒーレンスの良い半導体レーザの入手が難しいため,赤外半導体レーザ導入を優先する方針である. 次に,要素技術である高精度型POFイメージガイドの基本特性の解析と合成開口法を用いたヘッドへの適合性を検討し,25年度末までにその可否を決定し,26年度で決定するセンシングヘッドの最終構成に反映させる. また,もう一つの要素技術であるGPGPUを用いた解析・高速結果表示用ソフト開発において,24年度で得られた円錐鏡位置ずれ自動補正アルゴリズムを盛り込んだ結果表示ソフトの開発を進める.以上3つの検討を柱として研究を行い,最終年度にそれぞれの研究成果を一体化させて内視鏡とするための基盤を確立することを目的とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度から研究費を繰り越す理由は,研究の方向性を決定する前の基礎研究を中心に行ったためで,基盤となる実験系構築のための最低限の物品購入で済ませて,基礎実験系より得られた知見から今後購入する機器の仕様を決定するためである. 24年度で得られた知見から,緑色レーザ用のシャッターやセンシングヘッド内に挿入する小型カラーCCDや専用フレームメモリの購入を行う.また,センシングヘッドの試作に関わる材料費,加工費用を支出する. また,24年度で得られた研究成果を発表するために5月にドイツで開かれる光計測の国際会議(OpticalMetrology2013)へ出張する予定である.また,同様に研究成果の発表を国内開催の国際会議(OIE'13)や国内学会(OPJ,応用物理学会)で発表を行う.GPUの性能によっては,より高速なGPUの購入も検討する予定である.
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