研究課題/領域番号 |
24560524
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
八野 知博 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (50284906)
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キーワード | 計測工学 / 制御工学 / システム工学 |
研究概要 |
本研究は,統計的学習法とベイズ推定に基づく高精度な電力系統台風被害予測システムの構築を目的としたものである。これまでは,電力系統被害量の分布が台風気象情報値に関して定常性を保つと仮定し,被害予測システムを構築してきた。今年度は,台風気象情報値が大きいほど,被害量の分散も大きくなる傾向を持つことから,気象情報値と被害量の関係をより現実のものに近づけるために,非定常型の共分散関数で表現されるガウシャンプロセスモデルに基づいて被害予測システムを構築する方法を開発した。過去約15年間に鹿児島県奄美群島に接近または上陸した台風の気象データと電力系統実被害データに基づいてシミュレーション実験を行い,従来の定常型のガウシャンプロセスモデルに基づく予測法よりも精度の良い被害予測値とその信頼性の情報が得られることを確認した。さらに,ガウシャンプロセスモデルの学習に,ミツバチの採餌行動をモデル化したartificial bee colony algorithmや,蛍の発光行動をモデル化したfirefly algorithmを適用し,これまでの遺伝的アルゴリズム等を適用した場合と比べて,少ないパラメータ設定やシンプルなアルゴリズムで効率的に学習が行えることを示した。本予測システムによれば,(予測値+信頼領域幅)の値を最悪被害量とみなすことにより,停電復旧作業の際の復旧要員や資材を適切に準備することが可能となり,効率良い復旧作業に貢献できる意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画のほとんどの項目を実施し,その一部は学術論文誌や国際学術会議で公表できていることから,おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度,平成25年度で基礎的な電力系統台風被害予測システムを構築できたことから,今後はこの基礎的な予測システムの予測精度改善と予測システム構築の効率化を推進していく。具体的には,学習に用いる電力系統被害データについてかなり過去のものから最近のものまで同じ重みで扱っていたが,電力系統は日々のメンテナンス等で年々補強されてきている現実を踏まえ,予測システムの入力として台風襲来の時刻の情報を加えることを検討する。さらに,現状では予測システムの学習にかなりの計算コストがかかっているため,学習精度を損なわずに計算効率を向上させる学習法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初消耗品購入を予定していたが,本年度は研究遂行する上で現有のもので間に合ったため,次年度使用額が生じた。 信号処理ソフトウェアMATLABを平成24年度に購入し,平成26年度の研究で開発予定の電力系統台風被害予測システムを検証し実現する環境は既に整っていることから,平成26年度の物品購入費は消耗品購入に必要な程度である。平成26年度は研究成果を発表するための国際学術会議発表旅費や,本研究の基盤となる最適化アルゴリズム等の研究動向調査のための国内学会参加旅費等に,合せて約30万円の経費を見込んでいる。
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