研究課題/領域番号 |
24560525
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
藤井 智史 琉球大学, 工学部, 教授 (30359004)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海洋レーダ / 津波観測 |
研究概要 |
本研究課題は、短波帯や超短波帯の電波を利用して、海表面流速の面的連続観測が可能な海洋レーダを用いて、津波の詳細な2次元流動場の把握を実現し、防災情報の高度化に資することを目的としている。この目的を達成するために、本年度は以下の項目について研究を実施した。 1. 【海洋レーダデータの収集】 2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震によって発生した津波が到来した際の海洋レーダのデータを詳細に検証するために、当時短時間間隔で連続観測を行っていた国内沿岸の海洋レーダの抽出を行った。その結果、国土交通省中部地方整備局にて設置展開されている伊勢湾及び三河湾の海洋レーダ6基のスペクトルデータと通常モード公開用流速データ、ならびに国土交通省四国地方整備局が設置している紀伊水道四国側の2基の海洋レーダのスペクトルデータと通常モード公開用流速データを入手した。さらに、国土交通省近畿地方整備局にて設置されている紀伊水道和歌山側の海洋レーダ2局のAD データを入手した。これらのデータは合計で5Tバイトにおよぶため、データ利用利便性を考慮してサーバシステムに収納し、計算環境の整備を行った。 2. 【データ処理アルゴリズムの構築】 通常時の海流速モニタリングは1時間ごとであるため、周期が1時間以内の津波の流速変化はとらえることができない。流速算出のためのドップラスペクトルの計算には、SN比の向上とスペクトルの安定化のために通常1時間(または1時間半)の平均化を行っている。これを、数分間程度のデータ量で精度よくドップラスペクトルを推定する手法の検討を開始した。 3. 【津波観測に適した海洋レーダおよび観測モードの提案】 現用の海洋レーダの仕様をもとに、津波観測を可能にするためのパラメータを列挙し、その初期検討を行い論文に取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋レーダデータ収集に関して、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震によって発生した津波の到来時を含む約1年程度のスペクトルデータの入手を試みた。その結果、国土交通省中部地方整備局で設置展開されている伊勢湾の海洋レーダ3基、三河湾の海洋レーダ3基、並びに国土交通省四国地方整備局の紀伊水道四国側に設置の2基の海洋レーダのスペクトルデータと通常モード公開用流速データを入手した。加えて、国土交通省近畿地方整備局にて設置されている紀伊水道和歌山側2局の海洋レーダのAD データを入手した。 また、それら5Tバイトにおよぶデータをデータサーバに収納し、一度に多所からアクセスできデータ処理が可能にするための環境を整備するとしていた平成24年度の計画を予定とおり実施した。 海洋レーダの処理アルゴリズム構築に関しては、和歌山局のADデータから求めた短時間スペクトルと沖合に設置のGPS波浪計とを比較した初期結果をもとに、ARモデル等の短時間スペクトル推定法の適用検討に着手できた。 後年度で実施予定であった、津波観測に適した海洋レーダのシステム構築の提案については、前倒しで検討を開始し、津波観測が可能な短時間連続観測を実現できる海洋レーダのハードウェアに必要なパラメータの列挙を行い、初期検討の結果を論文に取りまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に構築できたデータベースをもとに、短時間データからのドップラスペクトル推定アルゴリズムの構築と精度検証を行う。推定アルゴリズムには、ARモデル等の非線形スペクトル推定アルゴリズムなどの応用を検討する。精度検証には、GPS波浪計などの洋上データや潮位データ、風向風速データなどの陸上データを活用する予定である。さらに、インバージョンにより津波波源の推定などへの応用の可能性も検討する。 海洋レーダから得られる流速値から波高情報を得るための変換法の検討を行い、津波シミュレーションとの相互比較も活用し検証する。 津波観測に適したレーダ観測パラメータと海洋レーダの提案に関しては、必要なパラメータをまとめ、それを実現するための送受信機やアンテナの仕様とその実現可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の支出において、無駄のないように注意深く物品購入等を行った結果、最終的に交付額に比べて若干の差額が生じた。これは、研究の進展に応じて無駄なく支出した結果であるので、次年度においても次年度交付分の助成金と合わせて、無駄なく使用する予定である。
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