研究課題/領域番号 |
24560525
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
藤井 智史 琉球大学, 工学部, 教授 (30359004)
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キーワード | 海洋レーダ / 津波観測 |
研究概要 |
本研究課題は、短波帯や超短波帯の電波を利用して、海表面流速の面的連続観測が可能である海洋レーダを用いて、津波の詳細な流動場観測を実現し、津波の到達検出ならびに被災地域の把握など防災情報の高度化に資することを目的としている。この目的を達成するために、本年度は以下の項目について研究を実施した。 1.【津波流速場変動からの波源域推定】 海洋レーダの流速場計測値を逆伝搬させて津波波源域での初期水位を逆計算することにより正確な初期波源が求められれば、そこから津波到達時の波高や津波浸水域の予測などが精度良く行うことができ、救援計画策定を精度良く行え救援活動が効率よく実施できる等の防災上大きなメリットとなる。その検証のために、海洋レーダで得られる流速精度や観測時間と逆計算で求めた初期波源の精度を、モデル津波を用いて計算機シミュレーションにて比較実験を行った。その結果とし、津波初期水位の再現性は津波の卓越周期とレーダ観測時間との相対関係で決まることを明らかにした。 2.【津波検知アルゴリズムの検証】 津波の伝搬速度を考慮すると、津波検知には短時間処理による検知が必要となる。そのためには、ベクトル合成やノイズ除去、他成分の分離などに要する時間を極力短くすることが望まれる。その一方法として提案されているqファクターについて、その有効性を実際の津波到来時の観測データを基に検証した。海底地形(等深線)に平行となるバンドの幅を変化させて、qファクターを構成する三要素(流速増加関数、流速偏差関数、相関関数)の寄与度を測った。その結果、ノイズ成分はバンド幅内の流速値平均によって十分なSN比となる程度に抑えられ、潮汐による潮流成分のような津波周期とは異なる流速変化は除去できることが示された。また、qファクターの値そのものは相関関数の影響が一番大きいが、検知のための閾値設定に注意を要することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の推進方策に則り、海洋レーダの流動場変動のデータから津波波源域と初期水位をインバージョンにて逆推定する方法を開発するとともに、観測時間や流速精度などの観測パラメータと初期水位等の再現精度を計算機シミュレーションにて検証した。その結果は国際学会にて発表するとともに論文に掲載された。 短時間スペクトル推定法を海洋レーダに適用し、流速観測の時間を短縮する試みについて、検討を開始し初期的結果を口頭発表した。また、海洋レーダ観測におけるスペクトル推定やSN比に影響を及ぼす、短波帯地表波伝搬に関して考察を行い口頭発表した。 また、2011年東北地方太平洋沖地震津波の到来時に観測された海洋レーダのスペクトルデータから、津波検知にかかる手法のパラメータ検証を順調に進め、その有用性と課題について取りまとめ、国際学会での発表を行うことになった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果を元に、海洋レーダの流速場変動データからのインバージョンによる津波波源域や初期水位の再現性への観測パラメータの影響に関する研究を進める。また、津波検知にかかるパラメータの検証を、実際に得られて津波到来時の流速データを用いて行い、湾の形状や海底地形の相違による検知確度への影響について検討する。 最終年として、これらの成果を取りまとめて国際学会等へ発表するなどの成果発信に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で購入予定の計算用サーバについて、時間的余裕をもって調達請求にもかかわらず、消費税アップにかかる注文集中がメーカの想定以上に発生し納期延長となり、年度内納入が不可能となったことによる。 年度明け後ただちに発注を行い、入手することになっている。(現時点において、すでに発注済みである。)
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