研究課題/領域番号 |
24560530
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
内山 孝憲 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50243324)
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キーワード | 筋音 / 歩行 / 粘弾性 |
研究概要 |
トレッドミルを歩行中に総腓骨神経に電気刺激を与えて筋音を計測するシステムを構築し,誘発筋音のみを抽出することに成功した.まず,膝関節角度,足関節角度と筋活動の関係を調べた.関節角度はゴニオメータで,筋活動は筋電計で計測した.その結果,踵接地の前0.2秒から後0.2秒で筋活動が高くなった.そこで,靴の中敷に薄型のフットスイッチを設置して,踵が接地したとき,2回に1回の割合で電気刺激を与えるよう回路を作成した.被験者にメトロノームを聴かせて一歩行周期を1.5秒として3 km/hで240秒歩行させて筋音を計測した.踵接地をトリガとして,電気刺激(パルス幅500μs,刺激強度25 mAまたは8 mA)を加えたときと加えなかったときの筋音をそれぞれ同期加算平均した.歩行のための随意収縮による筋音は加算平均すると零になる.一方,歩行そのものによる加速度は,電気刺激を加えるときと加えないときで理想的には同一の経時変化を示すので,電気刺激を加えたときの信号から加えなかったときの信号を減算すると,電気刺激によって誘発された筋音のみを抽出することができる.抽出された筋音は,電気刺激直後から0.1秒までの区間で減衰振動を示した.刺激強度が25 mAのとき第一陽性ピークは0.023秒に現れ,その大きさは4.6 m/s2であった.第一陰性ピークは0.036秒に現れ,その大きさは-3.8 m/s2であった.刺激強度が8 mAのときにも同様に刺激直後から0.1秒までの区間で減衰振動が計測された.また第一陽性ピークは0.023秒で3.4 m/s2であり,第一陰性ピークは0.036秒で-2.8 m/s2であった.刺激強度が弱いと誘発筋音のピークが小さくなったこと,および誘発筋音のパワースペクトルの周波数帯域から,構築したシステムによってトレッドミル歩行中の誘発筋音のみを抽出できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歩行は前年度に計測システムを構築した自転車こぎ運動に比べて,運動そのものの周期毎の変動が大きいことが予想されたが,一回の試行で電気刺激ありの信号となしの信号を交互に計測するシステムを構築することによって,歩行の動作そのものによる加速度を十分に取り除くことができ,次の解析に進むことができる誘発筋音を抽出することができた.
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今後の研究の推進方策 |
自転車漕ぎ運動および歩行時の誘発筋音を多数の被験者を対象として計測する.このとき,自転車漕ぎ運動では負荷の大きさや周期を変化させる.歩行では歩行速度を変化させる,また,抽出した筋音についてシステム同定法を適用し,同定した伝達関数の極から固有周波数を求める.固有周波数は,筋の弾性の指標である.
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