研究課題
自転車漕ぎ運動を対象として,負荷とペダルの回転数を様々に変化させ,膝関節角度が80度のときに外側広筋に電気刺激を加えて誘発筋音を計測した.筋音のセンサにはコンデンサマイクロフォンを用いた.計測される信号には,誘発筋音に加えて随意筋音と大腿の動きによる振動が含まれる.そこで,同期加算平均して随意筋音を取り除いた.つぎに電気刺激を加えなかったときの信号を同期加算平均して大腿の動きによる振動を求めてこれを前述の信号から取り除いた.誘発筋音のシステムを同定したところ,安静時の変位筋音と同様に3次のモデル(筋音2次+マイクロフォンの回路1次)で近似できた.伝達関数の極から固有周波数を求めて,また被験者の体重から大腿の質量を推定して,弾性係数を求めた.弾性係数は,自転車漕ぎ運動におけるパワー出力に線形に増加することを明らかにした.歩行を対象とした実験では,電気刺激を加えると姿勢にわずかに変化があり,それを立て直そうとする動作が含まれるため,自転車漕ぎ運動と同じ計測方法では,システム同定法を適用できるSN比の信号を抽出することができなかった.そこで,電気刺激を加えないときの歩行による振動(加速度)を自己回帰モデルで近似し,これをもとにカルマンフィルタを構成して,誘発筋音を含む信号を平滑化した.平滑化した信号は歩行による加速度である.これを誘発筋音と歩行による加速度を含む信号から引いて誘発筋音を抽出した.誘発筋音のシステムは,安静時の加速度筋音と同様に6次のモデルで近似できた.伝達関数の極から固有周波数を求めて弾性係数を推定したところ,踵接地時には安静時と比較すると,弾性係数が20倍以上増加することを明らかにした.本研究で提案する方法によって,初めて歩行時の弾性を推定することができた.
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生体医工学
巻: 53 ページ: 印刷中
SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
巻: 7 ページ: 321~326
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