研究課題/領域番号 |
24560532
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
山谷 克 名城大学, 都市情報学部, 教授 (80293611)
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キーワード | ハール変換 / 離散コサイン変換 / ディジタル画像 / 非可逆圧縮 / 国際研究者交流 / アメリカ |
研究概要 |
ディジタル画像の非可逆圧縮については,ブロック単位の離散コサイン変換(DCT)を適用し,その変換係数を量子化する方法が最も広く用いられている.DCTに基づく圧縮手法においては,コサイン波で構成される基底が原因となりエッジを含むブロック画像に目に付くノイズが生じるという問題がある.このようなノイズは一般にモスキートノイズと呼ばれている. この問題の解決策として,我々は,エッジなどの不連続な部分には矩形波を基底とするハール変換(HT)を適用し,グラデーションやテクスチャ部分にはDCTを適用するDHCT(DCT- and HT-based Combinational Transform)に基づく画像圧縮アルゴリズム(以下ではDHCT法と表記する)を提案した.まず入力画像をブロックに分割し,それぞれのブロック画像データに対してDCTおよびHTを適用する.このようにして得られたそれぞれの変換係数の中でそれらの1-ノルムの値が最も小さくなる直交変換を選択し,圧縮処理に採用する方法である.さらに,主に高精細画像の圧縮を目的とし,DHCT法で基底選択の指標に用いた変換係数の1-ノルムを一般のp 乗和へと拡張することによって,DHCT法の圧縮効率の改善,圧縮画像の再構成時に要する演算コストの軽減,および同一圧縮レートにおける画質の改善を試みた.その結果,一定の情報量に圧縮した後の再構成画像に含まれる,エッジ近傍の歪が明らかに軽減されることを確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究目的であった原信号の勾配の復元処理を含めたハール変換に基づく周波数変換に対する数学的および実験的考察,また提案する周波数変換に量子化および符号化まで含めた段階での離散コサイン変換を用いた場合との比較・検討についても,ほぼ達成することができた.さらに当初の研究計画からの発展形として,離散コサイン変換の一部に,矩形波を基底に持つハール変換を適応的に組み入れることによって,エッジを含むブロック信号を効果的に圧縮することができるという特徴を持つ新たな周波数変換を考案することができた.さらに,基底選択の指標に用いる1-ノルムを一般のp乗和へと拡張することによって,再構成画像におけるエッジ近傍の歪が明らかに軽減されることも確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究期間中に発表したDHCT法に基づく高精細画像に対して効果的な圧縮符号化アルゴリズムを構築する.さらに,当初の研究課題である原信号の勾配の復元処理を含めたハール変換を適応的に組み入れる新たな周波数変換方式について検討する.また,提案するアルゴリズムの数学・数値的特性に関する基礎的な研究成果を踏まえ,提案する圧縮符号化アルゴリズムの高精細かつ高次元のデータの圧縮,高精細デジタル動画像の圧縮への応用方法について数学的および実験的に研究を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
学内の在外研究制度で海外研究協力者を訪問する機会が与えられたため,当該研究者の招聘予定がキャンセルされた. 論文投稿,学会発表など成果発表の機会を追加し,その投稿料あるいは旅費等として使用する.
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