研究概要 |
本研究の目的は、介護・福祉用ロボットのように人間に接するか接しないかの近距離の検出が必要な機器に対し、可聴音を用いて距離を検知する測距システムを実現することにある。既に位相干渉に基づく音響測距法については、様々な見地から有用性を確認しており、今年度は以下の成果が得られた。 1.最小探知距離は送信波の帯域幅に依存しており、最小探知距離を短くするためには帯域幅を広げる必要があった。この問題点を改善するために、パワースペクトルの代わりに解析信号を導入した(N.Nakasako et al., Proc. of 2012 IEEE ICSPCC, pp.680-685, 中迫他、電気学会論文誌C, 132巻, pp.1749-1755)。これにより、0m の超近距離からも原理的に測距可能と思われる。 2.従来の測距法は対象物の移動を考慮していない。この問題点を改善するために、帯域分割した帯域インパルス音に対して時間遅延を与えた信号を送信波として導入した(中山他、電気学会論文誌C, 132巻, pp.1774-1775)。これにより、移動体の距離と速度の測定が原理的に可能と思われる。 3.位相干渉に基づく音響測距法は様々な応用が期待される。例えば、音声を用いた測距(N.Nakayama et al., Proc. of 2012 IEEE ICSPCC, pp.674-679)、クロススペクトル法と音響測距法の組合せによる複数死角制御型ビームフォーマ(N.Nakayama et al., Acoustical Science and Technology, vol.34, pp.80-88)、パラメトリックスピーカを利用した音響測距に基づく立体音場再現(廣畑他、日本音響学会研究発表)などについて可能性を検討している。 以上の成果を踏まえ平成25年度以降の測距システムの開発につなげたい。
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