研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護・福祉用ロボットのように人間に接するか接しないかの近距離の検出が必要な機器に対し、可聴音を用いて距離を検知する測距システムを実現することにある。既に位相干渉に基づく音響測距法については、様々な見地から有用性を確認しており、今年度は以下の成果が得られた。 1.従来の測距法では測定系の影響のために偽の距離を検出する。この問題点を解決するために、1ch 観測のパワースペクトルにおける隣接周波数成分に着目する(N. Nakasako et al., Proc of ICSV'21, 8ページ(CD-ROM収録))。これにより、測定系の影響の低減が実用的に可能と思われる。 2.実際の測定環境を考えるとき、環境雑音の混入は避けることができないために何らかの対策が必要である。そのために、同期加算法を、クロススペクトルを用いた音響測距法(K. Suzuki et al., Proc of ICSV'21, 8ページ(CD-ROM収録))やリニアチャープ音を用いた音響測距法に導入することを試みた(中迫他、電気学会論文誌C, 134巻, pp.1626-1627)。これにより、雑音環境下においても測距の可能性が広がったと思われる。 3.位相干渉に基づく音響測距法は様々な応用が期待される。例えば、2ch マイクロホン2組を用いた音響測距法による対象物位置推定(鈴木他、電子情報通信学会論文誌C, J97-A巻, pp.343-346)、マイクロコンピュータを用いた小型の音響測距システムの試作(中迫他、システム制御情報学会研究発表)、位相干渉に基づく音響測距法を用いた等価的な反射係数の推定(N. Nakasako et al., Proc. of Initernoise2014, 8ページ(CD-ROM収録))などについて可能性を検討している。
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