研究課題/領域番号 |
24560540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤田 政之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90181370)
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研究分担者 |
畑中 健志 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (10452012)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 制御理論 / 協調制御 / モバイルセンサネットワーク / 意思決定 / ゲーム理論的学習 |
研究概要 |
本申請課題は,動的環境のモニタリングを実現する協調制御理論を確立し,実験システムを構築した上でその有効性を検証することを目的とするものである.特に,以下の二つの課題の解決を目指す.一つは人間とモバイルセンサから構成されるグループを想定し,人間の指令に従いながら理想的なネットワーク状態を達成する協調制御法の提案である.もう一つは,環境情報の学習や適応を含む上位の意思決定機能をセンサ群が自律的に達成する協調制御法の提案である. まず,前者に関しては,申請者らの過去の研究を発展させ,一部のセンサのみが人間の指令を受け取るという状況下で目的の協調行動が達成されることを理論的に証明することに成功し,この結果は当該分野における最重要国際会議と目されているIEEE Conference on Decision and Controlに採択・掲載された.また,人間への効率的な情報のフィードバックを可能にするセンサ群の協調推定アルゴリズムの提案にも成功し,これは当該分野における最難関学術雑誌であるIEEE Transactions on Automatic ControlにRegular Paperとして採択・掲載された. 後者の課題に関しては,ゲーム理論的協調制御理論に基づいて,分散的な通信情報と環境フィードバックの下で全体最適な行動を選択する楽手アルゴリズムを新規に提案し,この成果は国際会議および国内雑誌論文として採択・掲載された.さらに,カメラネットワークの環境モニタリング制御にこの手法を援用し,現在国際誌への論文投稿中である. 最後に,これらの研究の検証に必要となるロボットネットワーク・カメラネットワークシステムの構築に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下,人間を含む制御に関するアプローチを課題(i),環境への学習・適応に関するアプローチを課題(ii)とする. まず,課題(i)に関しては,当初の予定どおり問題設定の確立および「摂動システム理論」に基づく解の導出に成功した.これにより,一部のセンサのみが人間の指令を受け取る状況でも集団として理想的な協調が達成されることが示された.また,申請時には想定していなかった成果として,モバイルセンサネットワークにおける協調推定理論に関する新規結果を導出した.これにより,当初の課題であった協調制御と連携することで,より現実的なシナリオへの展開が可能となった.さらに,類似の問題ではあるが,ロボットの遠隔制御理論を援用する新規のアイデアを着想することに成功し,これについては,現在さらに高度な理論展開への試みを継続中である. 次に,課題(ii)については,当初は初年度を文献調査に充てる予定としていたが,想定よりも順調に進展し,新規の学習アルゴリズムの提案と,不確かな環境下における最適行動への確率収束性の理論証明に成功した.また,本理論を既存のカメラネットワークシステムに適用することで実験検証も行った.
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今後の研究の推進方策 |
まず,課題(i)に関しては,当初の予定とは外れるが,順調な進捗によって余った労力を新たに着想に至ったアイデアの発展に充てる.具体的には人間からの指令に遅れが生じる場合,あるいは望ましい情報をフィードバックできない場合を想定し,それらが全体の性能に与える影響の定量化を目指す. 次に,課題(ii)に関しては,想定外のアイデアの着想のため不十分となった文献調査を進めることで,提案アルゴリズムの問題点である収束速度の向上を目指す. さらに、当初の想定通り,モバイルセンサネットワークの実験システムを構築し,上記全ての理論結果の検証を行う.本課題の根幹は動的環境でのモニタリングであるため,実験室内で動的環境を模擬するシステムを構築する必要がある.現在環境情報の計測には無線視覚センサを想定し,フィールド上に光源や色源を配置し,視覚センサの計測値からセンサ位置の重要度を自動判別するシステムを構築する予定である.またセンサ搭載用のロボットとしてはquadrotorを,人間オペレータとセンサ群のインターフェースをしてiPadを想定している.以上の実験システムの構築を平成25年度内に終了する予定であるが,改修は多岐にわたるため,もし計画通りに進まない場合は次年度以降にも引き継ぐこととする.さらに,平成25年度以降は部分結果を当該分野の主要国際会議に投稿し,それらをすべてまとめて,最終年には国際ジャーナルにそれぞれの課題の結果を投稿する予定である.これらの文献の執筆には時間を要するため,研究分担者の助力を仰ぐ.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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