研究課題/領域番号 |
24560544
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鷹羽 浄嗣 立命館大学, 理工学部, 教授 (30236343)
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キーワード | 大規模ネットワーク動的システム / 分散協調制御 / ネットワーク / ロバスト性 |
研究概要 |
本研究の目的は,大規模ネットワーク動的システムにおいて,各エージェントのモデル変動及びネットワーク構造の変動の下で,システムのロバスト性を解析することにより,ネットワーク構造とロバスト性・制御性能との関係を解明し,ロバスト分散協調制御系を構築するための理論的基盤を構築することにある. 今年度の成果の概要は,以下の通りである. 1.加法的モデル誤差を有する線形エージェントからなるネットワーク動的システムに対して,オブザーバ型分散制御器により各エージェントの状態同期をロバストに達成するための必要十分条件を導出し,許容可能なモデル誤差の限界を評価した. 2.受動的な非線形エージェントからなる離散時間ネットワーク動的システムに対して,ネットワーク構造が確率的に変動する状況下での同期制御について検討し,同期を達成する相対出力フィードバック則が存在するための十分条件をグラフラプラシアンの期待値を用いて導出した. 3.入力飽和を有する線形エージェントからなるネットワーク動的システムに対して,飽和非線形要素をセクター有界なモデル誤差とみなすことにより,同期を達成する相対状態フィードバックゲインを設計するための線形行列不等式条件を導いた. 4.小型移動ロボットe-puckを購入して検証実験の環境を整備した.また,e-puckを用いて,フォーメーション制御の予備実験を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず,非均一なエージェント群またはネットワーク構造の変動の下でのロバスト協調制御に関する研究を行なう予定であった.非均一なエージェントモデルに関しては受動性の仮定の下で,また,ネットワーク変動については確率的な変動の下で,協調・同期を達成するための条件を導出した.この研究成果は,45th ISCIE SSS'13にて発表を行なった.なお,均一なノミナルモデルを持つ線形エージェント群のロバスト協調制御についても前年度に引続き研究を行い,その成果はIEEE Trans. on Automatic Controlにて論文掲載された. ロバスト協調制御の特別な場合として,入力飽和を有する線形エージェントからなるネットワーク動的システムに対して,エージェント間通信が双方向との仮定の下で,飽和非線形要素をセクター有界なモデル誤差とみなすことにより,ロバスト協調制御の枠組みで,同期を達成する相対状態フィードバックゲインを設計するための線形行列不等式条件を導いた.この結果は,第1回SICE制御部門マルチシンポジウムで発表し,これに関連する研究も第56回自動制御連合講演会で発表した. もう一つの研究項目として,通信路制約の下でのロバスト協調条件の検討があったが,これに関しては未着手であり,次年度に取り組むことにする. また,実システムを想定した検証実験・シミュレーションでは,小型移動ロボット群のフォーメーション制御の実験・シミュレーションを進めており,次年度に国内学会等で発表予定である. 以上のように,未着手の研究項目もあるが,概ね順調に研究を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
1【エージェントモデル不確かさとネットワーク変動の両方にロバストな分散協調制御】 前年度の結果を踏まえて,時変ネットワーク上でエージェントモデルの不確かさに対してロバストな分散協調制御系の設計を検討する. 2.【複雑ネットワーク上の分散協調制御】社会システム,インターネット,電力網を表現するモデルとして広く用いられているスモールワールドネットワークやスケールフリーネットワーク上での分散協調制御について,グラフの次数分布,平均頂点間距離,クラスタ係数などと協調・同期のし易さ・ロバスト性との関連を検討する. 3.【通信路制約のあるネットワーク上でのロバスト協調】通信路に量子化,パケットロス,通信遅れなどが存在するネットワーク動的システムにおいて,パケッロスはネットワーク構造の時間変動,量子化誤差と通信遅れは各エージェントのモデル変動とみなすことにより,ロバスト協調の枠組みで解析を行なう. 3.【効率的なロバスト分散協調コントローラの設計】大規模ネットワークに対して,分散コントローラの設計アルゴリズムを検討する.効率よく分散コントローラを設計するためには,ネットワークの構造をうまく利用するか,ネットワークの規模に依存しない設計条件を得ることが重要である. 4.【シミュレーション及び実験による検証】数値シミュレーションや小型移動ロボット群の制御実験を通じて,上記で得られた理論的成果の検証を行なう.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度末に残高61,841円となったが,少額であるので有効利用するため,次年度に繰り越し次年度研究費と合わせて使用することにした. 次年度における使途は,主にシミュレーションおよび検証実験のための物品および制御理論関連図書の購入にあてる予定である.
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