研究課題/領域番号 |
24560547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高井 重昌 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60243177)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 離散事象システム / 分散型故障診断 / リライアビリティ / 分散スーパバイザ制御 |
研究概要 |
安全・高信頼な制御系の実現には,故障の検出などを行う診断機能が不可欠である.本研究では,分散型離散事象制御系において,ネットワークの不具合などにより幾つかの診断器の判断が利用できなくなったとしても対象システムで発生する故障の検出を保証する,リライアブルな分散型故障診断法を確立することを目的としている. 高信頼な分散型離散事象制御系の設計においては,まず,与えられた制御仕様が満足されるように,システムの動作を制限するコントローラである分散スーパバイザを構成する必要がある.そこで,組込みシステムなどで見られるリアルタイム仕様にも対応できるように,時間付き離散事象システムでモデル化されたシステムを対象とし,分散スーパバイザによって達成可能な制御仕様言語の新しい計算方法,およびその制御仕様言語に対する分散スーパバイザの構成方法を提案した. また,故障診断法に関しては,n個のローカル診断器の内,最悪k個の診断器の判断のみが利用可能な場合でも故障の発生を検出できるという意味でリライアブルな分散型故障診断について考察した.まず,このようなリライアブルな分散型故障診断問題を定式化した.そして,n個のローカル診断器の内,最悪k個の診断器の判断のみにより故障の発生を有限ステップ内で検出できることを保証する(n,k)-リライアブル可診断性の概念を定義し,対象システムにおいてそれが成立するか否かを有限オートマトン上で判定するアルゴリズムの開発,開発したアルゴリズムの計算量解析を行った.さらに,最悪k個の診断器の判断が利用可能なもとで,故障の発生からその検出までの最長ステップ数を計算するためのアルゴリズムを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度では,当初,n個のローカル診断器の内,最悪k個の診断器の判断のみが利用可能な場合でも故障の発生を検出できることを要求するリライアブルな分散型故障診断問題の定式化,およびそのような故障検出が可能であることを保証するための(n,k)-リライアブル可診断性の概念の定義,その定義の正当性を示すことを計画していた. 平成24年度においては,問題の定式化,(n,k)-リライアブル可診断性の概念の定義に加え,(n,k)-リライアブル可診断性が成立するか否かを判定するアルゴリズムの開発,そのアルゴリズムの計算量解析,故障の発生からその検出までの最長ステップ数を計算するためのアルゴリズムの開発を行い,それらの成果は平成25年度に査読付き学術論文誌に掲載されることが決定している.このため,当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では,利用可能なローカル診断器の判断のうち,故障発生という判断が少なくとも一つあれば,分散型診断器全体として故障が発生したと判断するような分散型診断を考えた.平成25年度では,利用可能なローカル診断器のすべての判断が故障発生であれば,分散型診断器全体として故障が発生したと判断するような分散型診断について考察する.後者の判断統合を用いた場合に故障検出可能なシステムのクラスは,前者の判断統合を用いた場合の故障検出可能なクラスとは異なっており,平成24年度とは異なる研究成果が得られることが期待される. また,故障はその発生からできるだけ短いステップ内で検出されることが望ましい.そこで,任意の故障の発生に対して,それを最短ステップで検出できるという意味での診断器の最適性を定義し,最適な診断器の存在性,構成法などについて考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく.
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