研究課題/領域番号 |
24560548
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 光代 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (70201259)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ディスクリプタシステム / 安定化 / 状態方程式制御器 / 線形行列不等式(LMI) / 国際研究者交流(米国) |
研究概要 |
複合システム制御問題をシステム間結合と制御仕様を共に拘束条件としてモデルに含めた拡大非線形ディスクリプタシステム安定化問題に帰着させる解法の提案を目指し、モデル表現、システムの安定化制御器設計法について検討を行うと共に、国内外の研究者との意見交換を行った。 まず、本研究で用いるモデル表現としては、物理情報を保存し、かつ、複雑な変換を要しないディスクリプタ方程式表現を用いることとした。 ディスクリプタ方程式で記述されたシステムに対する既存の動的制御器設計法では、ディスクリプタ型制御器が考えられてきた。しかしながら、実装を考慮すると制御器は状態方程式で記述されるべきである。そこで、基礎的研究成果として、線形時不変ディスクリプタシステムに対し、状態方程式表現された安定化動的制御器が存在するための必要十分条件をLMI(線形行列不等式)により導出し、状態空間制御器設計法を提案した。 一方、非線形複合システムを取り扱う上で、非線形制御理論、複合システムの分散制御、動的グラフ理論についての研究動向を知ることは重要である。そこで、米国よりSiljak名誉教授を、そして国内からはサイ准教授を招へいし、さらに数名の国内研究者を含む8名の研究者が集まり、「ディスクリプタ・複合・非線形システムの解析・設計に関する研究会」を開催した。そこでは、各研究者が直近の研究成果を発表し合い、複合システム、非線形制御、ディスクリプタシステムの安定化、動的グラフ理論についての研究成果・研究動向についての討論を行った。その結果、モデル表現としてディスクリプタ方程式の有用性が再認識された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合システム制御問題の解法の提案を目指し、初年度である24年度においては、モデル表現法と安定解析条件、安定化制御則の導出を目指して研究を進めた。 非線形システムに対する制御問題を扱う上で、線形システムはその基礎となるため、まず、線形ディスクリプタシステムに対する状態方程式制御器設計法を導出した。その成果の一部は論文として公表した。 さらに、複合システムを対象とする上で直近の関連研究動向を知る必要があるため、国内外の研究者と共に複合システムの解析・設計に関する研究会を設けた。 初年度は、当初は非線形要素を含んだシステムを対象とする予定であったが、実際のところは本研究の最終目的達成のための基礎的研究、という意味で、線形システムを対象とすることとなった。基礎的ではあるが、新たな成果が得られたため、おおむね順調な進展であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の基礎固めで得られた成果を非線形複合システムへと拡張する。具体的には、まず、線形システムに対する安定化制御器設計法をロバスト性を考慮した設計法へと拡張する。一方で、複合システムのモデリング、安定解析法、そして安定化制御則の導出も検討する。モデリングでは、複合システムにおけるシステム間結合部分を静的拘束条件とし、静的非線形要素をディスクリプタ変数として、システム全体をディスクリプタ方程式により表現する。次に、静的非線形要素がノルム上界やセクタ条件を満たす場合について、LMI条件による安定解析法の導出を検討する。そして、安定条件が得られた場合には、安定化制御器存在条件へと拡張する。 複合システムを対象とする場合には、システムをいくつかのサブシステムに分割する必要があるが、その際、重複分割を導入することで、安定条件の緩和が期待できる。そこで、重複分割の導入による安定解析法、分散安定化制御則の導出も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究は上記のとおり、おおむね順調に進展したが、理論解析研究を主に行い、数値計算を伴うシミュレーションは行わなかった。そのため、当初予定していた計算機や計算用ソフトウェアは購入しなかった。その理由により、次年度に使用する予定の研究費が生じた。次年度は、この研究費に次年度請求分を合わせることで、数値計算を行うための計算機と計算用ソフトウェアを購入し、さらに研究上必要な数学関係雑誌や制御工学関係雑誌を購入、そして成果発表に使用する予定である。
|