研究課題/領域番号 |
24560555
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
野中 謙一郎 東京都市大学, 工学部, 准教授 (30298012)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | モデル予測制御 / 組込みシステム / 移動ロボット / 非線形制御 / 座標変換 |
研究概要 |
【4輪独立操舵・駆動車両のMPC】4 輪を独立に操舵・駆動できる全方向移動車両は,狭隘な環境での運用に適するが,車輪操舵角度の制限を考慮した制御が求められる.そこで,MPC により操舵角の制限を陽に考慮した制御側を構築し,クロック周波数が80MHz の組込みCPUのSH7058Fに実装した.その結果,目標軌道追従性を保ちながら,操舵角度制限を考慮しない場合に発生した切返しを回避して連続な操舵角度を実現し,障害物回避に成功した. 【計算速度高速化の検証】非線形MPCでは一般に計算量が増加する.そこで,前輪操舵車両を対象として,時間軸状態変換を適用してサブシステムに分解して線形化し,経路追従問題にMPCを適用した.その結果,組込みCPUのAMD Geode(クロック周波数は500MHz) のリアルタイム制御と,障害物回避を含んだ車庫入れ制御を実現した. 【脚車輪型移動車両のMPC】脚車輪型移動ロボットを対象として,関節角度を状態変数にとり,さらに角度の制約を陽に考慮したMPC則を導出し,障害物回避シミュレーションにおいてその有効性を検証した.予想通り制御性能は高いが計算コストが高いことを確認した.今後は前述の非線形変換などによる計算の効率化によって計算速度を向上させ,平成25年度以降の研究において,組込みCPUへの実装を目指す. 【車輪の横滑りを考慮した運動制御】移動ロボットで動力学モデルに基づくMPCを実現するための準備として,より簡単なモデルで記述される自動車型の車両において,車輪に横滑りを有するダイナミックスに対するMPCを構築し,その有効性を検証した. 【車両の自己位置推定】移動ロボットの位置・方向角の高精度計測を実現するために,レーザー測域センサによる周囲形状の計測結果を環境地図に対して数値最適化により適合し,拡張カルマンフィルタにより推定精度を向上させた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の主な目標である(1)組込みCPU用モデル予測制御のプログラムの開発,(2)低速走行時のモデル予測制御による障害物回避および自己位置推定精度の向上,の2項目について,達成度は下記の通りとなった. (1)の組込みCPU用モデル予測制御プログラムについては,入出力におけるルックアップテーブルの使用,浮動小数点演算の割り込み処理の回避はいずれも実装することができた.そして4輪独立操舵・駆動システムに対して,この手法の有効性を実証し,目標を達成することができた.このプログラムについては,まだ高速化の余地があるので,今後の研究を継続する上でさらに改良に努めたい.非線形座標変換については,前輪操舵車両を対象とした制御により,計算速度の向上を確認できた. (2)の低速走行時のモデル予測制御による障害物回避については,予定した比較対象となる低速走行での走行を確認した.また,測域センサによる自己位置推定について,計算アルゴリズムの改良による推定精度向上を実現できた.さらに,関節角度を状態とした次元の高いモデル予測制御による障害物回避をPC上に実装して,計算コストが非常に高いことを確認し,次年度以降の高速化の比較対象となるデータを得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,前年度までに開発した組込みCPU用モデル予測制御プログラムを脚車輪型移動ロボットに実装し,その動作を検証するとともに,姿勢と車輪位置を同時に変化させた障害物回避運動を実現する. 平成26年度は,前年度までの研究で組込みCPUに実装したモデル予測制御の,運動制御における性能検証を目的として,移動ロボットに対する動力学モデルによる高速走行と,タイヤ発生力配分制御を行う.併せてアルゴリズムの細部の改善に取り組み完成度を高める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はほぼ予定通りの執行をすることができた.残額は,研究発表および論文掲載料と,充電池など消耗品の購入に充当することを予定している.
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