研究課題/領域番号 |
24560558
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
大石 泰章 南山大学, 情報理工学部, 教授 (80272392)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | モデル予測制御 / 2乗和多項式 / 双対性 / 近似誤差 / 分岐 / 安定度 / 半正定値計画問題 / ペナルティ関数法 |
研究概要 |
本年度は,本研究課題の最初の年度として,次年度以降の研究の基盤を作るべく次の2つの研究を行なった:1.多項式的モデル予測制御器の設計法;2.分岐回避のための安定度最適化. 「1.多項式的モデル予測制御器の設計法」では,現在の状態の多項式で表されるモデル予測制御器を設計するため,2乗和多項式を使う方法を考え,その性質を理論的および実験的に解析した.従来使われてきた最適なモデル予測制御器は現在の状態の区分線形関数であり,特に状態の次元が高いときや,退化に近い状況のとき,区分構造を求める計算が難しかった.提案する設計法は,多項式を使うため区分構造を求める必要がない.得られるのは最適なモデル予測制御器ではなくその近似であるが,最適化問題の双対性を使うことで近似誤差の評価ができる.また,このことを生かして閉ループ系の安定性の保証ができる. 「2.分岐回避のための安定度最適化」では,非線形系のパラメータを自動調節し,望ましくない分岐を避ける方法を得るべく,不動点の安定度を最適化する問題を考えた.安定度は不動点における線形化行列のスペクトル半径であり,パラメータに対して微分不可能であるため直接の最適化は難しい.しかし,補助変数を導入し,行列不等式に定式化することで,微分可能な半正定値計画問題に帰着させることができる.この問題は設計変数に対して一般に非線形であるが,ペナルティ法の適用によって解くことができ,さらに所望のパラメータの自動調節法を得ることができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度得られた2つの結果は次年度以降の研究の基盤になるものである.早い時期に基盤整備ができ,研究は順調に進んでいる. 「分岐回避のための安定度最適化」の結果は,当初計画では平成25年度に実施予定であったが前倒しで成果が得られた.このため次年度以降の研究がやりやすくなった.一方で,計算量削減の研究は遅れており,次年度以降はこれに注力する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得た「多項式的モデル予測制御器の設計法」は,計算量が大きく,小規模の問題にしか適用できないという欠点がある.大規模系への適用を考えると,問題の構造を使うことで計算量の削減をすることが必要であり,今後はこの方向で研究を進める. 「分岐回避のための安定度最適化」については,現状では不動点とその安定度が所与であるとしてこれを最適化するという,言わばオフラインの計算法になっている.今後は,非線形系を時間発展させながら安定度を推定して最適化するという,オンラインの計算法にするべく研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,日程の都合で国際会議での発表を1回見送ったため,研究費に余りが生じた.次年度はこの分の発表を行なうため,旅費を多めに使う予定である.それ以外は特に変更はなく,基本的に当初計画の通りである.
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