研究課題/領域番号 |
24560559
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
高原 健爾 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (70292076)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 活性化アルミニウム微粒子 / 水素発生 / 小型車両 |
研究概要 |
平成24年度は,車載用の水素発生装置の設計と試作を中心に行った。具体的な仕様としては,300[W]の燃料電池を搭載して自宅の近所で1時間程度の走行を可能にするものと想定して,約4[L/min]の水素発生を1時間保つことができるように設計した。反応器を耐圧容器で作製し,袋詰めした450[g]の活性化アルミニウム微粒子をその反応器内に入れるものとし,水の供給量に応じて水素発生量を変化させられることを確認した。その際,反応器内の発熱により想定したよりも多い水量が必要となったが,車載スペースが限られることから水回収システムを考案し,接続することにした。水素発生反応を促進するためには反応器内の温度を一定レベル以上に保つ必要があるが,一方で水を回収するには発生した水素の温度を下げなければならず,発生水素の温度を下げる必要が生じた。これに対して,発生した水素ガスをラジエータ内に通すことにより適切に温度を下げることができ,十分に水を回収できるようになった。この工夫により,当初予定していたスペースの半分程度で車載用の水素発生装置を実現することができた。開発した水素発生装置を用いて水素発生反応を測定し,調整を行った結果,電動ポンプを用いて25[mL/min]の一定流量で水を反応器内に送り,約4[L/min]の水素流量を1時間以上にわたって継続できるようになった。動作確認のために,中古の高齢者用福祉車両を解体し,その駆動部のモータに自作したDC-DCコンバータを介して燃料電池を接続し,小型車両を自作した。燃料電池の水素源として開発した水素発生装置を接続して実験を行ったところ走行することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では,水素発生のファジィ制御系設計を主にしていたが,初年度は水素発生装置の試作が中心となった。当初の計画とずれが生じた原因は以下のようなものが挙げられる。①活性化アルミニウム微粒子を製造している株式会社ハイドロデバイスの経営状態が芳しくなく,活性化アルミニウム微粒子の供給が滞ったこと,②水素発生装置の規模が大きくなったことから反応時の発熱量が増え,仕様を実現するための再検討に時間を要したこと,③ポンプの納入に時間がかかり,水素発生特性測定実験が十分に行えなかったこと,である。 ①については,活性化アルミニウム微粒子の製造機一式を手に入れることができたので,現在大学内で製造できる体制が整ってきている。また,活性化アルミニウム微粒子と未処理のアルミニウム微粒子とを混合して使用する方法についても検討中であり問題は解決できつつある。②については,製造を依頼したハイドロデバイスと協議・実験を重ねた結果安定した水素発生を可能とする装置を製作することができた。③については,現在種々の条件下での水素発生特性を測定中であり,ファジィメンバシップ関数を作成するための基礎データを取得中である。一方で,福祉車両の駆動部を利用した消費電力の小さい小型車両とは言え,実際の移動車両に燃料電池と試作した水素発生装置を搭載して実際に走らせることができた。したがって,当初の計画にあった制御系設計についてはやや遅れているが,次年度に計画していた車両への実装の可能性を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
①水素発生制御系の設計・実装:試作した水素発生装置では,4[L/min]の水素発生を1時間程度実現できる。この仕様では,小型車両で自宅の近所を走行するのに適当な性能であると考えられるので,アルミ微粒子を反応器内に追加する必要はないと考えられる。したがって,水素発生は活性化アルミ微粒子に水を供給することでのみ制御できると考え,水供給の制御系設計・実装を行う予定である。現在,水素発生特性を測定中であり,その特性に基づいてファジィメンバシップ関数を作成するための準備はできつつある。制御量としては,燃料電池の出力電圧と反応容器内の圧力の二つの値を選び,入力量としては水の流量を選ぶ。 ②燃料電池からの電力供給システムの開発:水素発生の制御系の開発に並行して,燃料電池でのモータ駆動システムの開発を行なう。初年度に購入予定であった小型車両を購入し,開発するモータ駆動システムを実装する予定である。 ③電気二重層コンデンサ(EDLC)を用いた電力補償制御システムの開発:燃料電池は,化学反応により発電するので負荷の急変には対応できない。そこで,開発する電気二重層コンデンサを利用した電力補償システムを設計する。発進時や坂道などモータが必要とする電力を燃料電池だけで賄えない場合には,電気二重層コンデンサからの電力を利用するためのシステムを開発する。 また,平成25年度からは,北九州高専助教の前川孝司氏に研究協力を依頼する予定であり,研究推進のための体制を充実させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は物品納入の遅れなどにより,563,253円を残すこととなったが,その原因は解消しており,平成25年度研究費と合わせて効果的に使用する予定である。具体的には,設備備品として,「原付ミニカー タケオカ自動車工芸製 ミリュー @798千円」を購入予定である。計画では同社製アビーを予定していたが,同程度の仕様の電動車両があり,より価格が安いことからミリューに変更する予定である。 その他,消耗品として電子部品,配管部品,機構部品 等の購入を予定している。また,本研究で得られた成果を国内外に広く発信する費用に充てたい。
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