研究課題/領域番号 |
24560559
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
高原 健爾 福岡工業大学, 工学部, 教授 (70292076)
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研究分担者 |
前川 孝司 北九州工業高等専門学校, 電気電子工学科, 助教 (00711300)
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キーワード | 活性化アルミ微粒子 / 水素発生 / 小型車両 |
研究概要 |
本年度は,前年度作製した水素発生装置を搭載した車両の製作と走行試験を中心に行った。概要は以下の通りである。 ①走行中の水素安定供給について:水素発生の原料となる活性化アルミ微粒子の製造には多くの時間が必要となることから,24年度後半から活性化アルミ微粒子と未処理のアルミ微粒子とを混合して利用することについて検討を始めた。その結果,50%ずつの混合でも所望の特性が得られ,供給する水の流量を種々に設定することにより水素の発生量を変化させられることを確認できた。②活性化アルミ微粒子製造について:諸般の事情により,平成23年度から原料となる活性化アルミ微粒子の製造を研究室内で行い始めたが,その水素発生特性を揃えるための工夫を行った。また,製造中の電力消費に関する検討を行った。③3輪タイプの軽車両の製作と走行:より軽量な車両とするために,3輪タイプの試作を行い,走行実験を行った。搭載した水素発生装置は,初年度の装置を改良して若干コンパクトに製作したものである。水素発生装置から燃料電池に水素を送り,発電電力を並列接続されたモータコントローラと鉛蓄電池に供給するシステムとした。この車両では100[W]のインホイールモータを用いており,およそ1時間の走行が可能であり,約20[km/h]の最高速度を実現できることを確認した。車両はオープンキャンパスで公開し,一般参加者を乗車させて走行することができた。④微粒子のX線分析:研究計画に予定はなかったが,水素発生制御のために活性化アルミ微粒子の組成や反応のプロセスを知る必要から,九州シンクロトロン光研究センターでトライアルユースを利用してX線分析を行った。分析結果については現在解析中である。 以上のような成果があったが,予定していたファジィ制御系設計は実現できなかった。また,市販車両への搭載については,検討を始めたもののまだ実現してはいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画では,市販の原付ミニカーへ水素発生システムを実装する予定だったが,研究はほとんど進まなかった。原因には以下のようなものが挙げられる。 ①機器の故障が続き,十分な実験を行えなかったこと ②活性化アルミ微粒子の性能を十分に維持できなくなったこと ③水素発生装置の構成についての問題が明らかになったこと ①については,重要な機器・部品として送水ポンプのコントローラ,微粒子製造に用いる遠心分離機,燃料電池,データロガー,送水ポンプが壊れた。その他にも,熱電対や各種センサが壊れており,それらの修理や交換に時間がかかった。これらの多くは,卒業研究生に対する指導不足や管理不徹底が原因であり,全て研究責任者である本報告者の責任である。一方で,発生装置の構造に原因とする故障もあり,構成の改正を検討中である。②については,活性化アルミ微粒子の性能が,製造者の技量に大きく依存することが原因である。手順をマニュアル化したが,わずかな不注意で試料が酸化して実験時にほとんど水素発生しないこともあった。これについても,指導不足や管理不徹底による本報告者の責任である。③については,激しく水素発生反応したときに微粒子のパッケージが破裂してしまうことが原因であることがわかった。破裂したパッケージから出た微粒子が,装置全体に運ばれて,配管部品やポンプが詰まった。これは,①の故障の原因であり,パッケージ方法や送水法の改善,フィルターの設置などで解決できた。25年度末に,原付ミニカー(トヨタ コムス)を購入したが,現在も燃料電池を修理中(故障原因不明)であり,実装・実験できてはいない。一方,3輪タイプの試作車では1時間以上の走行を確認できているが,故障続きで公表できるデータが収集できていない。しかしながら,条件は整ってきており,次年度には共同研究者の前川孝司先生の協力を得て,制御系の設計・実装を行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度計画していた以下の研究テーマについて取り組む予定である。 ①水素発生制御系の設計・実装:これまでの計画に従い,水素発生装置内にパッケージ化されている活性化アルミ微粒子に水を供給することにより所望の水素発生を実現するためのファジィ制御系の設計を行う。一方で,これまでの実験から反応の効率を上げるためには,一定の水素発生を継続させることが望ましいことがわかったので,燃料電池での発電電力を鉛蓄電池や電気二重層コンデンサへ充電し,駆動モータへ電力供給する方法についても検討する。それらのシステムについて比較を行い,より良いシステムを実装する予定である。 ②燃料電池からの電力供給システムの開発:試作した3輪タイプの小型車両では,DC-DCコンバータを用いて燃料電池からモータへ電力を供給するシステムを完成させる。一方,購入した原付ミニカーはプラグインシステムを持っていることから,そのプラグを利用して燃料電池の電力を供給する方法について検討する予定である。 ③車両の走行試験:水素発生システム,燃料電池,電力供給システムを実装した小型車両の走行実験を行い,提案する車両の性能を確認する予定である。
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