研究課題/領域番号 |
24560562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂井 悦郎 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90126277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コンクリート / 熱量計 / 水和 / 性能検査 / スラッジ水 |
研究概要 |
混合材を多量に使用したセメントや産業廃棄物使用量を増大させたセメントあるいは凝結遅延剤によりセメントの水和を制御したスラッジなどを利用する場合には,現状の試験成績表によるセメントの受け入れ検査では不十分であり,実際に使用しているセメントの性能やスラッジ水中のセメントがどの程度の水和能力を有しているかなどを把握してコンクリートの製造に反映させる検査システムの構築が必要である.これから実際に使用しようとするセメントやスラッジ水中のセメントの性能を的確に捉えて,コンクリートの製造に反映できるような,熱量測定の統合化による労力のかからないセメントの初期性能の検査システムを構築することを目的に実施した.本年度は,ペルチェ素子を利用して,恒温槽の不要な簡易型のコンダクションカロリメータを開発し,セメントの水和反応速度の測定が可能であり,品質管理に十分使用できることを明らかにした.しかし,比較試料を中心にして,6点の測定試料をその周囲に配置する設計としているため,測定は可能であるが,ノイズが約35μVであり,さらに改良研究を行っている.比較試料と測定試料を対にして同一の位置に配置する方式に代えるとノイズが約2μVに低減することを見いだしているので,装置の改良を実施する予定である.なお,新規熱量計の開発には,熱量計製造会社の協力により開発費用は発生していない.遅延剤により水和を制御されたスラッジ水中のセメント量を熱量計により把握するシステムの検討では,硝酸マグネシウムを利用し,遅延剤で水和抑制したセメントの水和を再開させる手法を確立し,熱量計による水和熱の測定からセメント量の定量が可能であることを見いだした.さらに,セメントの水和反応モデルを利用することとで,初期10時間程度の熱量測定から24時間後の水和熱量を推定可能なことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
簡易型熱量計を開発し、検査システムの普及の可能性を確立し、さらにスラッジ水中のセメント量の把握に熱量計が利用できることを見いだした。これにより、従来利用していたサンドイッチ型熱量計より、経済生に優れ、操作が簡便な方法の確立が可能となった。また、従来より開発して来ている初期水和反応用熱量計、少量試料断熱熱量計、反応速度測定装置の組み合わせにより、セメントの性能を検査するシステムの可能性を見いだすことができた。サンドイッチ型伝導熱量計により,注水後24時間から72時間程度までの水和に伴う発熱量と発熱速度曲線を測定することとで,セメントの凝結特性や初期強度発現性の検査が可能である.しかし,この熱量計は物理化学の研究用の微少熱量測定にも利用できるように非常に高精度としているため操作が煩雑であることと,温度コントロールのための,空気循環槽と温度制御ユニットが必要であり設置スペースが必要であること,品質管理や検査の場合の比較的大きな熱量を繰り返し行うと試料の発熱によりヒートシンクが温度上昇してしまうため一定温度での測定を条件とした静的な熱量測定としては好ましくないことなどの欠点を有していることが明らかになった.本研究の成果として特筆すべき点は、開発した新規熱量計は,サーモモジュールのペルチェ効果を利用した冷却・加熱方式によりヒートシンクを直接温度制御し,空気循環槽と温度制御ユニットが不要であり、検査に利用する熱量計として,小型軽量,取り扱いが簡便,経済性,正確さおよび再現性の確保,長期安定性があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今回開発した新規な伝導型熱量計を改良して測定精度を向上させる.新規汎用型伝導熱量計の開発を継続し,従来のサンドイッチ型熱量計との測定精度の検証を行う.また,既に開発に成功している各種の熱量計による,セメントの注水直後,1時間の水和,24時間の初期水和,断熱条件下での水和熱の測定を,普通セメントや混合セメントに適用して,データを収集し,セメント性能検査システムの原型を構築する.また,スラッジ水中のセメント量の把握のシステムについては,水和反応モデルの精度向上による早期判定法としての利用を確立する.なお,実際のレディミクスツコンクリート工場での適用のため,高性能AE減水剤や中性能AE減水剤などと遅延剤との併用や混合セメントなどが併用された場合の適用性についても基礎的なデータを収集する.新たに開発した初期反応速度測定装置と新規汎用型伝導熱量計を用いて,セメントの水和発熱挙動と初期性能である流動性,凝結特性や強度発現性などの関連を明らかにし,さらに実際の10工場から入手した性能が明らかになっているポルトランドセメントと遅延剤により水和を制御したスラッジ水を用いて,上記システムによりセメントの初期性能を評価できるかどうかの実証試験を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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