廃棄物使用に伴い、また、より高度な各種の材料の使用により簡便な品質管理・検査手法の確立が望まれる。また、海外への建設会社の仕事の展開も検討されているが、セメント品質の変動への対応に苦慮している。このような状況において、簡便なセメントの品質検査手法の開発が切望されている。本研究では、各種の熱量測定を利用することで体系的な品質検査システムの構築を目的している。従来のコンダクションカロリメータの撹拌機構を改良した改良型コンダクションカロリメ-タ、反応速度測定装置、微少量断熱熱量計およびサンドイッチ型コンダクションカロリメータを開発し、それらの利用による統合的なシステムを構築した。さらに適用範囲の拡大を目指して、遅延剤を用いたスラッジ水の利用における熱量計の利用法を確立し、膨張材の表面処理による反応制御への熱量計の利用や鉱化剤としてフッ素系化合物を用いた場合の流動性への影響などへの熱量測定によるセメントの性能予測手法の適用性を明らかにし、本システムの適用範囲を拡大した。また、鉱物組成が異なるセメントの水和発熱量と圧縮強度の関係について検討し、水和発熱量から圧縮強度を予測する手法を提案し、熱量測定の有用性を明らかにした。なお、初期の水和発熱量から最終発熱量を予測する水和反応モデルについて、粒度分布を考慮したモデルに改良し、推定精度を向上させた。 以上のように本研究では各種の熱測定装置開発し、それらの組み合わせによるセメントの初期性能を把握する品質管理・検査システムを提案した。特に、個別の熱量測定によるセメントの性能予測を統合化し、熱測定装置の組み合わせにより、より簡便な品質管理システムの構築が可能性を明らかにした。
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