研究課題/領域番号 |
24560566
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森川 英典 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70220043)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | PC鋼材 / 凍結防止剤 / 腐食 / 維持管理 / 道路橋 |
研究概要 |
グラウト充てん不足部の局部腐食を考慮したPC鋼線における応力腐食割れ破断性状を明らかにするため,グラウト充てん不足部を模擬した試験体を作製して促進腐食を実施した後に,局部腐食を有するPC鋼線を抽出して応力腐食割れ試験を実施した.その結果,最大応力が大きくなるほど破断時間が短くなる傾向が見られた.また,亀裂の起点となる局部腐食の周辺の腐食状態が破断時間に影響を及ぼすと推察した. グラウト未充てん部のPC鋼線束に対する亜硝酸リチウムを用いた補修方法の効果を検討するため,PC鋼線束を用いてPCグラウト未充てん境界部を模擬した試験体を作製し,グラウト未充てん部に対して亜硝酸リチウムを用いた補修方法を行った.その結果,従来のPCグラウトによる補修と比較して,亜硝酸リチウム水溶液と亜硝酸リチウムを添加した補修材による補修は,既設グラウト中に新たな腐食が発生しておらず,分極抵抗も増大した. 亜硝酸リチウム水溶液注入による補修部のPC鋼線のカソード分極特性の検討を行うため,既設部をアノードとするマクロセル腐食抑制機構を明らかにするための基礎的な検討として,亜硝酸リチウム水溶液注入の有無を考慮して補修部を模擬した試験体を作製し,カソード分極曲線を測定した.その結果,亜硝酸リチウム水溶液に浸せきさせることで従来法と比較してカソード分極しやすくなる傾向が見られた. 亜硝酸リチウム水溶液による腐食抑制効果の耐久性を検討するため,亜硝酸リチウム水溶液浸せきによる腐食抑制効果の耐久性を検討するために,亜硝酸リチウム水溶液に浸せきさせたPC鋼線を高温多湿環境に暴露した.その結果,亜硝酸リチウム水溶液浸せき前後で腐食減量に違いはほぼ見られず,腐食抑制効果は維持されると推察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,PC鋼材の腐食や破断のメカニズムを明らかにし,その劣化予測モデルを構築するとともに,亜硝酸リチウム水溶液を用いた新たな補修方法の効果を評価し,合理的な維持管理手法を提案するものである. 平成24年度の研究において,PC鋼材の腐食特性,応力腐食割れ特性および亜硝酸リチウムを用いた補修方法の効果とメカニズムを評価・解明するための基礎実験を行い,有益な結果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に開始した促進腐食試験の中で,長期に渡って促進した試験体において,解体した後,形状観察,断面欠損測定などを行うことによって腐食を評価する,これらの結果を踏まえて,鋼線の設置状況(束ね方),グラウト充填状況,促進腐食期間が腐食状況に及ぼす影響について検討する 平成24年度に実施した促進腐食試験により得られた腐食PC鋼線の応力腐食割れ試験を行い,その特性と感受性を評価し,統計的な分析により不確定性を考慮した特性評価を行う.以上の検討を行った上で,PC鋼線の腐食進行および破断発生の統計予測モデルを構築する.さらに,このモデルを用いて,PC鋼線の腐食・破断の信頼性シミュレーションを行う. グラウト充填不良を有する腐食PC鋼材の補修方法について,新旧グラウト境界および種々の状態にある旧グラウトにおける補修効果を詳細に確認し,電気化学的特性に基づく補修メカニズムを解明するとともに,本補修方法の適用条件について検討する.さらには,実橋梁に適用した後の補修効果確認のためのモニタリング手法の検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費残額3円が生じた.翌年度の実験消耗品購入の中で,この分の使用を予定している.
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