研究課題/領域番号 |
24560566
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森川 英典 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70220043)
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キーワード | PC鋼材 / 凍結防止剤 / 腐食 / グラウト / 維持管理 / 道路橋 / 亜硝酸リチウム / 応力腐食割れ |
研究概要 |
昨年度に続いて,グラウト充填不足部の局部腐食を模擬したPC鋼線を用いて活性溶解型応力腐食割れ試験を実施した.応力集中係数を用いて評価し,最大応力が高いほど破断時間が短くなる傾向を確認した. LiNO2水溶液注入の有無が補修部のPC鋼線のカソード分極特性に与える影響について検討するとともに,既設部を模擬した試験体との間に生じるマクロセル腐食電流についても測定した.その結果,LiNO2水溶液の注入は,従来のグラウト再充てんに比べて,分極抵抗が増大し,カソード分極しやすい傾向にあり,マクロセル腐食電流が低減された. グラウト充てん不足境界部のPC鋼線束の腐食状況を模擬した試験体を作製し,LiNO2水溶液の浸透性能について検討した.その結果,著しい腐食が生じたグラウト充てん不足境界部のPC鋼線束内側へはNO2-が十分に浸透せず,腐食抑制効果が得られない可能性が考えられた.そこで,[Cl-/NO2-]を調整した水溶液を用いて検討した結果,腐食抑制効果が不十分な領域の周辺に存在する腐食抑制効果が十分な領域がカソード分極しやすい傾向にあることによって,従来法に比べてマクロセル腐食電流量は大きくならない可能性が考えられた. LiNO2水溶液の注入により,従来法に比べて分極抵抗が増大するとともに,カソード分極しやすい傾向にあったため,既設部をアノードとしたマクロセル腐食電流が低減される傾向にあった.また既設部の腐食程度,グラウトのCl-濃度が低いほど,カソード分極しやすい傾向にあり,補修部をアノードとしたマクロセル腐食電流が低減された. LiNO2を用いた補修方法の補修効果を評価するモニタリング手法の確立を目的とし,PC鋼線束をグラウトに埋没させた試験体を作製し,PC鋼線束に対する自然電位の計測対象,センサーからの電流分配および分極抵抗の計測対象面積について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PC鋼材の局部腐食特性,応力腐食割れ特性については,24,25年度の実験測定により,おおむねデータの蓄積ができ,統計解析により感度評価モデルおよび信頼性評価への組み込みが検討できる準備ができた. グラウト充てん不良を有する腐食PC鋼材の補修方法について,新旧グラウト境界および種々の状態にある旧グラウトにおける補修効果を詳細に確認し,カソード分極の増大による電気化学的補修メカニズムを明らかにした. 補修効果のモニタリング手法の基礎的検討を理想化した供試体を用いて行い,PC鋼線束における自然電位および分極抵抗の特性を明らかにした.実構造物におけるモニタリング測定については,現場での施工がずれたため,26年度に開始する.
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今後の研究の推進方策 |
PC鋼材の局部腐食特性,応力腐食割れ特性については,24,25年度の実験測定に基づいて統計解析を行い,感度評価モデルおよび信頼性評価への組み込みを行い,PC鋼線およびPC鋼線束(PCケーブル)としての信頼性解析手法を構築する. グラウト充てん不良を有する腐食PC鋼材の補修方法について,さらに,実構造の条件を考慮し,補修効果の確認とマクロセル腐食特性について検討する.また,犠牲陽極材を併用した補修効果の検討を行う. 補修効果のモニタリングとしては,26年度4~5月に本補修工法の試験施工が行われる兵庫県内実橋梁において,モニタリング測定を開始し,モニタリング手法の有効性を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費残額が84,153円生じた.実橋梁モニタリングが平成26年度にずれたことによるものである. 平成26年度に実施するモニタリング測定経費として,この分の使用を予定している.
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