研究実績の概要 |
平成26年度は,局部腐食を有するPC鋼線を用いて活性溶解型応力腐食割れ試験の追加実験と新たに水素脆化割れ試験を実施した.その結果,水素脆化割れの場合には平均応力との相関はある程度認められるものの,活性溶解型応力腐食割れと異なり,最大応力との関係は明確ではないことを確認した.また,最大応力の評価精度向上を目的として,2次元有限要素法モデルを用いて形状パラメーターを変化させた場合の応力集中係数の変化について評価した.さらに,既設PC道路橋にて実際に確認された破断事例と,PC 鋼線の環境条件を踏まえ,活性溶解型応力腐食割れが生じている可能性が高いことを示した.さらに,活性溶解型応力腐食割れ試験により破断したPC鋼材破面について,走査型電子顕微鏡を用いた破面解析を行い,脆性破断の進展経路とメカニズムについて明らかにした. グラウト充てん不足部を有する既設PC道路橋の補修方法としてこれまで亜硝酸リチウム水溶液を用いる手法に着目し,検討してきた.本年度は,既設部の劣化状況を考慮した上でマクロセル腐食特性について検討を行った.その結果,既設部の劣化状況が悪くなるほどマクロセル腐食電流量は大きくなるが,亜硝酸リチウム水溶液を注入することで,従来法のグラウト再注入よりもマクロセル腐食は抑制されることが確認された. 兵庫県内のM橋において,亜硝酸リチウム水溶液を用いた補修工法で2014年4月に試験施工が行われた.補修後の状態を評価し,腐食抑制効果の継続性を把握することを目的として,補修後の自然電位,分極抵抗をモニタリングした.その結果,M橋の自然電位は一部卑な傾向があり腐食の危険性があるものの,ほとんどの測定点において腐食の危険性はないと判断されること,M橋の分極抵抗は塩化物量が微小な測定点で大きくなっており,塩化物量が微小な方が本補修工法での補修効果が期待できること,が明らかとなった.
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