研究実績の概要 |
棒形スキャナにより、点検孔内のひずみを測定する方法について検討を行い、ひび割れ発生に至る劣化の進行過程をひずみによって長期モニタリングする可能性について調べた。実験手法としては、パイプの外側にひずみゲージを2か所貼付した試験体を作製し、ひずみゲージ値が500μ,1000μ,1500μ,2000μおよび2500μとなるように試験体に引張応力を与えた。ひずみの解析手法は、デジタル画像相関法を用いてパイプ長手方向(主走査方向)のひずみを求めた。パイプ円周方向(副走査方向)のひずみについては、手動でラインセンサを回転させることによる各ピッチの移動誤差が大きいことから、ひずみの計測が困難であることが予備実験より明らかとなっている。実験結果としては、ひずみゲージ値に対する棒形スキャナ画像から求めたひずみ解析値の誤差は、最大で36%、最小で14%であった。誤差の絶対値の平均は12%であり、良好な精度でひずみ計測が可能であることが明らかとなった。ひび割れに至るひずみ変化を定期的に計測しコンクリート構造物の劣化進行過程をモニタリングするという新しい手法が可能であることが示された。 実構造物による劣化モニタリング手法としての適用性について検討を行った。対象とした構造物は、ASRが発生した橋梁の橋台である。橋台側面に発生したASRのひび割れを含むようにφ25mmの点検孔をダイヤモンドコアドリルにより削孔した。点検孔の深さは300mmであり、開発した棒形スキャナにより深さ方向に2回スキャニングを行い、取得した画像を合成して1枚の展開画像とした。画像より、ARSによって発生した微細なひび割れまで確認でき、また、ASR特有の粗骨材の周囲の反応リムも確認することができた。点検後には、点検孔の孔口にシリコン製のゴムキャップを挿入して養生を行った。本結果よりモニタリング手法として適用性があることが示された。
|