研究課題/領域番号 |
24560572
|
研究機関 | 群馬工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 英紀 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30551725)
|
キーワード | コンクリ-ト / 維持・管理 / 新素材 / 温度ひずみ |
研究概要 |
当初の計画通り、炭素繊維シート、アラミド繊維シート、下地処理、母材の各供試験体に繰り返し温度負荷を2500サイクルまで与え、貼付した三軸ひずみゲージから、縦軸に温度、横軸を主ひずみとした履歴曲線を整理した。 なお、三軸ひずみは2方向の応力が生じて最も変状が生じやすいと予想した端部の隅角部に貼付した。母材、下地処理およびアラミド繊維シートの各試験体は2500サイクルまでほぼ同型の履歴曲線を描いたのに対し、炭素繊維シートは、サイクル数に応じて塑性ひずみが増加する傾向を示した。また、炭素繊維シートの履歴曲線を直線に近似して、その勾配の変化を調査した結果、2500サイクルでは初期に比べて約2倍直線の勾配が大きくなったことがわかった。この勾配の逆数は、線膨張係数の単位を持つ物理量である。したがって、炭素繊維シートでは、サイクル数が増加すると見かけの線膨張係数が小さくなることが判明した。 一般に、疲労のように外力が繰り返し作用した場合に部材に生じる応力-ひずみ曲線は、弾性係数に相当する曲線の接線勾配が徐々に小さくなってひび割れや破断等のマクロな劣化現象が見られる。このことより、本実験結果では、炭素繊維シートと下地処理を一体化させるのに必要なエポキシ樹脂との剥離、あるいは同繊維シートに含浸させたエポキシ樹脂と繊維間の抜け出しに相当するズレによる損傷が進展・累積して見かけの線膨張係数が小さくなったと推定される。 研究計画の当初より推定していた炭素繊維やアラミド繊維の線膨張係数が負の値をもつことから、正の値を持つ他の材料との局所的なズレ変形が疲労に影響する仮定がある程度立証された実験結果が得られたと考える。 今後は、さらにサイクル数を増加したデータの整理を行うとともに、損傷力学を基にした数値解析の整備を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素繊維およびアラミド繊維シート補強した試験体を作製し、各シートを貼付する前の下地処理および母材コンクリ-トの4種類の試験体にひずみげゲージを設置して、2年間で稼働できる最大の繰り返し数まで(2500サイクル)温度履歴を負荷できた。 その結果、下地処理や母材コンクリ-ト、アラミド繊維、炭素繊維のひずみり歴曲線がサイクル数に応じて得られたことが当初の研究計画工程に沿って遂行することができた。また、同結果から、下地処理や母材コンクリ-トではほぼ損傷が生じていないのに対し、特に、炭素繊維シートでは塑性ひずみや損傷がサイクル数に応じて進展していることが判明した点も当初の予定通りである。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度では、損傷力学を基本とした数値解析にて温度履歴による損傷の進展を実験結果と対比しながら検証することを第一の目的とする。今回は、等方性材料を仮定できる母材コンクリ-トや下地処理を対象としたモデルを構築する。 さらに、各試験体は2500サイクルまで温度履歴を負荷した結果が得られたので、損傷が生じたと推定される炭素繊維シートと対比するためにもアラミド繊維シートの2試験体を対象に温度履歴を負荷し、4000サイクル程度までは実験を継続して実施する予定である。
|