研究課題/領域番号 |
24560574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
遠藤 典男 長野工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (10213597)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポーラスコンクリート / 再生骨材 / 表面性状改善 / 竹筋補強 |
研究概要 |
ポーラスコンクリート(以下PoC)が有する種々な機能を向上させ、適用範囲の拡大を目指し、以下の3 つの観点からPoC の性能に対して考察した。 再生骨材を適用したPoCの作製に関する課題では、2種類のクラッシャーにより作製した再生細骨材、および再生粗骨材作製のためコンクリートガラを破砕した際に生じる再生細骨材、の3種類の再生細骨材を適用したPoCを試作した。各々の再生細骨材を用いたモルタルの15打フロー値は水セメント比と細骨材セメント比を変更することにより、PoC作製時に適していると考えられるフロー値に調整することができた。一方、再生粗骨材の諸特性に起因し粗骨材周囲に適度なモルタルを付着させることができず、仮定空隙率と目標圧縮強度を満足できなかった。 PoCの表面性状改善に関する課題では、市販のでんぷん系接着剤のうち竹粉をPoCに付着させる場合に適した接着剤を選定できた。表面に粉体状の竹粉を塗布するにあたりでんぷん系接着剤を使用するが、水中、流水中等、水が接する場所に粉体を接着したPoCを設置する場合、長期間にわたり粉体が接着していた方が望ましいという観点から、粉体の付着状況の経時変化によりでんぷん系接着剤の選定を行った。本実験と同時に、水のpHを計測することで溶出量の指標とした場合の、アルカリ成分の溶出抑制効果を検証したが、特に設置・打設直後において効果が期待できることがわかった。 最後に、自然環境下における竹筋補強PoCの耐久性を確認する課題では、現在竹筋補強PoCの暴露試験を継続中であり、平成26年度中に曲げ試験を行い、その耐久性を検証する。また、竹筋補強したパネル状のPoCブロックを壁面に接着し1年間暴露試験を行ったが、PoCの空隙率が大きく十分な保水性能を有していなかったため、植生基盤としての機能を検証することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再生骨材を適用したPoCに関する課題では、再生細骨材,再生粗骨材を適用したPoCを試作したが、再生細骨材を配合したモルタルのフロー値制御は可能となった。しかしながら、空隙率、圧縮強度の制御は、再生粗骨材の物性値―特に実積率―に起因していると考えられるばらつきにより、不十分な状態である。また、再生粗骨材の表面処理方法に対しても、当初計画では、スラッジ水に浸潤、セメントペーストで表面コーティング、表面の凹凸をすり減りの各種方法で実験した結果、すり減りによる表面処理が容易かつ表面処理効果が得られることが検証できた。 PoCの表面性状改善に関する課題では、当初計画のでんぷん系接着剤の選定に加え、PoC表面からのアルカリ成分の溶出に関し、pHを溶出量の指標としてはいるが、抑制効果が期待できることがわかった。 最後に、自然環境下における竹筋補強PoCの耐久性を確認する課題では、竹筋補強PoCはりの暴露試験を継続中である。また、竹筋補強PoCブロックを作製し後、壁面に接着し暴露試験を開始したが、空隙率が15%と大きく十分な保水性能を有していなかったため、植生基盤としての機能を検証することができなかった。 以上の3つの課題の達成度を総合すると、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
再生骨材を適用したPoCの作製に関する課題では、前年度の目標を達成できなかった空隙率、圧縮強度の制御方法として以下に記す対応を行う。すなわち、粗骨材最大寸法が40mmの再生骨材を0~20mmと20~40mmの2つに分け、練り混ぜ時に両者を混合することにより、実積率のばらつきを小さくする。本対応により、少量のPoCを練り混ぜる場合においても実積率のばらつきが小さくなると考えられ、空隙率、圧縮強度の評価を行う。また、再生骨材を使用したPoCを打設するにあたり耐久性が問題となるが、再生細骨材を混合したモルタルと川砂を混合したモルタル、およびセメントペーストを用いてPoCを練り混ぜ、2年程度の暴露試験を行う。さらに、再生骨材の品質を3段階程度に分類したうえでPoCの練り混ぜを行い、骨材の相違と圧縮強度の関係を評価する。 PoCの表面性状改善に関する課題に関しては、24年度の研究成果を基に竹炭粉と竹材粉をPoC表面へ接着後、流水にさらされる環境下において、生物被膜の形成と粉体接着の影響に対する評価を行う。本年度は、PoC表面からの溶出物の種類と量を詳細に分析し、分析結果と昨年度に指標としたpHとの相関を検証する。さらに、竹炭粉と竹材粉を接着したPoCブロックを作製し、河床へ半年程度設置し、粉体接着と生物皮膜の形成状況を評価する。 自然環境下における竹筋補強PoCの耐久性を確認する課題では、PoCはりを作製し、水槽内に半年程度静置した後、曲げ強度を測定することにより,湿潤環境下における耐久性を評価する.また、繰り返し凍結融解(水中-冷凍庫内で凍結-自然乾燥のサイクル等)が作用した後で,曲げ強度を測定することにより,凍結融解に対する耐久性を評価する。上述のPoCに関する実験と平行して,竹に対する湿潤環境下,凍結融解環境化における耐久性を,引張強度を測定することにより評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
再生骨材を適用したPoCの作製に関する課題では、ミキサーで再生粗骨材と鉄球を回転させて表面性情改善を行う方法が、再生粗骨材の表面処理には適していると判断したため、鉄球を購入する(5万円)。 PoCの表面性状改善に関する課題では、PoC表面から水中へのアルカリ成分溶出をpHにより評価したが、本年度は、詳細な溶出成分評価に関する専門的知識の供与と溶出成分分析を外部委託する予算が必要と考えられる(12万円)。また、引き続きPoC表面にでんぷん系接着剤により木質由来の粉体を作製するための材料(竹、竹炭、木炭等)を購入する(3万円)。 自然環境下における竹筋補強PoCの耐久性を確認する課題では、竹筋補強PoCブロックの暴露試験を行うために、地面と45度~60度程度傾斜する壁面を作製するため、およびPoCブロック作製時の型枠用のコンパネ、パイプ等の資材を購入する(5万円)。 また、研究の遂行、発表に必要な諸経費が必要となる経費(PoC作製に必要なセメント、川砂利、砕石、その他の消耗品10万円程度、実験補助のための謝金10万円程度、論文投稿、研究発表料5万円、出張旅費10万円(土木学会、コンクリート工学協会等が主催する学会出席))として使用する。なお、前年度は出張旅費が当初計画よりも少なかったため、本年度の研究遂行、発表に必要な消耗品、実験補助の経費に使用する予定である(12万円程度)。
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