本研究では,CFRP(炭素繊維補強プラスチック)構造部材の変形・耐荷挙動の力学的メカニズムの解明を,材料と構造の統合的アプローチにより行うことを目的として,以下の5項目に沿って実施した.最終年度は(5)について実施した. (1)CFRP材料試験値の適用範囲の検討,(2)CFRP構造解析用の材料特性値の検討:2種類の積層構成のCFRPについて材料試験と曲げ載荷実験を行った.斜行方向の繊維による寄与が減じられる場合に,材料試験から得られた弾性係数は積層理論による算定値と比較して小さい値が得られることを確認した.一方で,積層理論による算定値を用いた曲げ耐荷力は実験値に近いことを確認した. (3)CFRP構造部材の変形・耐荷機構の解明:せん断スパン長を変えて曲げ載荷実験を行った.材料試験による特性値で算出した曲げ耐荷力は,異なるせん断スパン長に対しても実験値と概ね一致した.また,画像計測により得た変形場と材料試験による特性値に基づき破壊指標値の分布を得ることで,変形・耐荷挙動の把握をより明瞭に行うことができた. (4)CFRP構造部材の変形・耐荷挙動の解析手法の構築:実験で観察された変形・耐荷挙動を再現できる有限要素解析手法と簡易推定式の構築を行った.CFRPの単層板破壊を考慮した解析を実施して,部材の非線形挙動の再現を行った. (5)CFRP構造部材性能の観点からの最適積層構成の検討:引張強度に比較して圧縮及びせん断強度が低いCFRPにおいて,上フランジ,ウェブ,下フランジにおいて,板厚,板幅,積層構成を変えた合理的な断面について基礎的な検討を行った.また,中詰材を用いた圧縮とせん断抵抗の増加について,外殻材であるCFRPと各種の中詰材との相互作用を解析的に検討した.
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