研究課題/領域番号 |
24560576
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩熊 哲夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60120812)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 変形の局所化 / 応用力学 / 増分構成則 |
研究概要 |
まず現在得られている解の正当性を確認するために,微小変形理論の枠内の古典的な手法で得られている解との比較を行った。その結果,特に地盤や岩盤で重要となる圧縮側の解の信頼性に問題が発見された。その原因を探りながら,整合条件の扱い方について検討をした。結局,圧縮条件の扱いについては今後の課題となっているが,いくつか新しいことも得られた。 一つは本格的なシミュレーションと整合条件に関連してであり,シミュレーションは次年度以降の課題であるが,簡単な一様場の計算をいくつか行った結果,整合条件をより厳密に考える必要があることが数値的に明らかになった。もしそうであれば,降伏条件を非線形関係のまま扱う必要が生じ,この局所化発生条件がそのまま用いることができるかどうか怪しくなっている。というのも,局所化条件が増分型でしか与えられていないからであり,それはそれで物理的には明白だからである。このあたりを種々定式化して比較した。したがって,当初厳密化のために目標としていた,この非線形関係をある程度考慮して整合条件を使わない手法に向かっての定式化にはあまりメリットは無いという印象を持つことになった。 また二つ目の,ヤウマン応力速度とトゥルーズデル応力速度という選択以外の場合との比較検討は四種類程度での着手となったため,用いる応力速度間の特徴の網羅的かつ定性的な比較まで至っていないが,ヤウマン系とそうでない系の二種類くらいに分類できそうなことが,対象とした応力速度間の比較で明らかにできた。したがって,その定義と物理的な意味が明白な,上の二種類の応力速度に限定して今後は比較してもあまり問題は無いという結論を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
用いる応力速度が持つ特徴については,定性的な比較はほぼ計画通り実施できた。ただし,構成則に非線形の降伏条件を用いることを検討していたことから,局所化条件が予測する解の特徴の比較が,代表的なすべての応力速度に対しての網羅的な検討は実施していない。その原因の一つは,報告にも書いた圧縮での評価の問題点が明らかにできなかったことである。もう一つは,目的で設定していた厳密な降伏条件使用が,そもそも増分型の局所化条件と両立可能かどうかについて模索し過ぎたことであった。結果的には,微小変形理論との比較による整合性を確保するためにも,増分型の局所化条件を用いるのが望ましく,結局は構成則も増分型を古典的な整合条件を満足させつつ定式化すべきであるという結論を得た。そもそも塑性論が履歴依存の構成則の数理的モデルである以上,増分型の構成則がまずは重要であり,降伏条件が非線形であるか否かとは別の理屈であることから,実は当たり前の結論であった。そしてこれは,昨今のシミュレーションでの扱い,つまり降伏条件を非線形関係のまま用いる手法と対峙する考え方であり,最終的な局所化予測の結果によっては新しい結論を導き出すことが期待できたことは大きな成果であった。また,基本的な代表的応力速度間の比較はできたことから,今後検討すべき速度の種類の数を減らせるという結論は得られたと考えていて,今後の研究は少しスムーズになるという印象を持つことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
原理原則に戻って,整合条件を各種応力速度に対して満足させることから始めて,各応力速度毎に増分型の弾塑性構成則を定式化する。場合によっては逆関係が解析的に求められない可能性もあり,その場合にはその物理的な意味についても考察し,整合条件式の物理的な意味を考察する。得られた増分型構成関係を用い,局所化条件を求め,特に圧縮での解析解の存在の可否と,その理由を検討する。その解の中で,微小変形理論の古典的予測による局所化の解との整合性から,モデルの優劣を議論する。 また今年度は,シミュレーション用のコンピュータとソフトウェアを充実させるが,汎用ソフトウェアではヤウマン応力速度を用いているため,そのシミュレーション解と,現在実行している解析解との関係を整理する。今までの経験では,この二つが合致しないか,あるいはヤウマン応力速度を用いた場合には精度のいい局所化予測ができない可能性がある結論を得ている。そのため,計算機シミュレーションにおける局所化とは何であるのか,という検討を加え,解析的な局所化条件そのものを検討し直す必要があるのか否かについての考察をする。 一方で,応力状態のみを汎用ソフトウェアで求め,いわゆる静力学的許容場の代りにその数値解(準許容場と呼ぶことにする)を用い,比較的簡単な例,純せん断や単軸引張状態における解析的な局所化予測を行う。その結果と上述非線形数値シミュレーション結果との比較を行い,この静力学的準許容場の利用の適用範囲と制度について考察し,設計への適用の可能性を議論する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|