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2013 年度 実施状況報告書

変形局所化発生条件から見た各種応力速度の適性

研究課題

研究課題/領域番号 24560576
研究機関東北大学

研究代表者

岩熊 哲夫  東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60120812)

キーワード変形の局所化 / 応用力学 / 増分構成則
研究概要

適切な応力速度という指標を決めるための理由について,じっくり検討を加えてきた。特に昨今の計算力学の分野では,汎用ソフトでは用いられていない超弾性モデルが主流になりつつあり,その物理的な意味の不鮮明性に大きな疑問を抱いていたが,そもそも保存的であるためには超弾性という選択しか無いのも事実であった。そこで超弾性と,非保存的でしかない亜弾性の比較をするに当たり,長年研究し続けていた弾塑性構成則の観点から,変形が大きな状況での塑性表現の解釈を根本的にし直した。
その結果,いわゆる更新ラグランジュ的な記述に立脚して,超弾性および亜弾性を見直すのが望ましいことが判明した。それを踏まえて,超弾性の更新ラグランジュ的な増分関係で定義できる亜弾性が,いわゆるトゥルーズデル応力速度と変形速度との構成関係であることを明らかにすることができた。それに基づき,単純せん断と一軸引張の弾性挙動を,いくつかの応力速度を用いて比較検討し,結果の物理的な検討結果から,トゥルーズデル応力速度の優位性を示すことができた。
これに対し弾塑性挙動を対象とした検討のために,計画でも述べていた変形の局所化解析を実施した。今年度は最も基本的な応力状態しか対象にはできなかったが,その結果,3次元的な応力状態であっても,コーシー応力のヤウマン速度よりはやや現実的な応力レベルで局所化が発生することを示すことができ,引張と圧縮で異なる挙動を予測する点でも,実験結果と定性的には整合する結果が得られた。また平面ひずみ状態では,トゥルーズデル応力速度が予測する局所化発生応力とせん断帯の向きは,これも実験結果と定量的にもよく合致することが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トゥルーズデル応力速度を選択する物理的根拠を明確にすることに今年度は集中した。というのも,現実的な材料パラメータを用いた実際の材料挙動の弾塑性ケーススタディにおいては,その変形レベルがさほど大きくないため,用いる応力速度による差異が鮮明にはならないと想像されたからである。計画当初は亜弾性に執着し過ぎ,また,物理的な意味が明確にはできない超弾性を軽んじていたが,保存的であるという弾性の基本原理からすれば超弾性は不可避の選択であることも事実であったため,それと亜弾性の対応について十二分な検討を行った。結果的には,塑性の記述を有限変形状態に対して拡張モデル化する場合の,基準配置の考え方に着目した結果,亜弾性を含む増分構成方程式は,物理的にも意味が明確な更新ラグランジュ的な定義で与えることが望ましいという結論に至った。
あとは,多軸応力状態の検討の前に,基本となる平面ひずみ状態での局所化解析を実施したところ,予想通りの改善が得られたが,一昨年のような,特殊な塑性の整合条件を用いた場合に比べるとその改善度が良好ではなかったため,その理由を種々検討した。残念ながらその明確な理由は現在のところ判明していない。さらに,3次元応力状態を対象とした場合には,Rudnicki and Rice の報告にもあるように,かなり軟化が進んだ状態での局所化しか見つからず,その理由を探し出すのに時間がかかった。結局 Rudnick and Rice も指摘していないような硬化係数の特性値の物理的な意味が解明でき,軟化がかなり進まない限り局所化しない理由を得た。

今後の研究の推進方策

今年度対象とした多軸状態は,軸対称という限定的な状況のみであったが,これを3次元に拡張した解析的アプローチには限界があり,また今年度の軸対称応力状態の結論からは,Rudnicki and Rice 以上の結果が得られる見通しはあまり無いと想像される。そのため,やはり数値解析コードを開発し,それによる数値解析によるケーススタディを通して,応力速度の特性比較が必要になると今は判断している。また,その数値解析であれば,より汎用的な多軸応力状態を対象とできるため,新しい発見も期待できる。
唯一問題と考えていたのは,塑性整合条件の一般的な取り扱いであるが,今年度の結果から考えて,従来のような物質微分による整合条件の方が,応力の更新そのものが結局は Cauchy 応力の物質微分でいいことからも明らかかもしれない。この点については,やはり原理原則的なものであることから,来年度も継続して検討を続けることにしたい。それを踏まえ,昨今の多くの研究者が用いている繰り返し計算であるリターンマッピングを敢えて用いずに,単純な増分計算のみで精度のよしあしを観察しながら,すくなくともヤウマンとトゥルーズデルの応力速度の特性が比較できるよう数値コード開発を目指す。基本的には初年度購入のソフトでヤウマン速度の結果は求められるので,それに対峙するトゥルーズデル応力速度の持つ特性を,最も基本となる有限変形の弾性座屈問題を対象として比較したい。座屈前の縮みの影響は,ヤウマン速度では考慮できないと予想されるからである。最終的には有限変形弾塑性挙動の数値シミュレーションを目指す。なお,弾性のコードは現在開発中である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 増分弾塑性構成則に用いる応力速度の特性の整理2014

    • 著者名/発表者名
      荒川淳平,岩熊哲夫,斉木功
    • 学会等名
      土木学会東北支部
    • 発表場所
      八戸工業大学
    • 年月日
      20140308-20140308

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公開日: 2015-05-28  

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