研究課題/領域番号 |
24560578
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 和久 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40175899)
|
キーワード | 鉄道軌道 / まくらぎ間隔のバラツキ / 振動低減 |
研究概要 |
昨年(H24)度,まくらぎ間隔のバラツキの測定データを1線区のみ入手した.しかし,車上からの画像データを処理したものであったため,精度や分岐部など特異箇所のデータ混入が懸念された.そのため本年度は,ロングレール直線区間約1kmを対象に2つの線区での手作業による計測を依頼し,データを得ることができた.その結果,当該のバラツキが概ね正規分布に従うことや,隣接するまくらぎ間隔が相関性を有することなど統計的特性が明らかとなった. 次に,当研究室で過去に構築した走行車輪・軌道連成モデルにおいて,まくらぎ間隔にバラツキやH24年度に求めた最適な配置パターンを設定し,応答解析を実施した.なお,バラツキは上述の実軌道において得られた測定データに基づき設定した.解析結果からレールたわみや輪重などを求めた結果,最適なまくらぎ配置を設定した軌道において,主要な共振モードが的確に低減できることがわかり,前年度に実施した定点調和加振解析と符合する結果を得た.一方,実軌道におけるバラツキを設定した軌道モデルでは,当該共振振幅がある程度低減されるものの,最適配置の場合程の効果は無く,共振抑制に対する最適配置の有効が確認された. なお,まくらぎ間隔のバラツキの存在がレールの曲げ応力等の増大をもたらすことが懸念される.そこで,等間隔配置の場合を基準とし,実軌道のバラツキを設定した場合,および最適配置とした場合を対象に,走行車輪・軌道連成解析を実施した.その結果,不均一なまくらぎ間隔を与えることで,間隔が広い区間においてレール曲げ応力とまくらぎ反力とが幾分増大するものの,そのレベルは5%程度と比較的小さいことがわかった.また,最適配置におけるまくらぎ間隔を平均間隔の±5cm程度に制限すれば,実軌道におけるバラツキ下での応力と同レベルに収まり,したがって軌道管理上問題とはならないことがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度である平成24年度に計画していた,鉄道軌道におけるまくらぎ間隔のバラツキに関する統計データの把握は,H25年度に追加実施することができた.当初計画では,H25年度において走行車輪・軌道連成モデルを用いた解析を通し,まくらぎ間隔のバラツキが動的応答特性に及ぼす影響を確認し,定点加振応答解析(H24に実施)との整合性を確認する予定であった.これについては,「研究実績概要」で述べたとおり,計画どおり実施することができた.加えて,H26年度に検討予定であったまくらぎ配置の最適化についてはH24年度に一部終了しており,それにより得られた最適配置の場合についても上述と同様の解析を行い,振動低減に対する有効性を検証することができた.また,まくらぎ間隔のバラツキがレール曲げ応力やまくらぎ反力に及ぼす影響もH25年度の検討課題としていた.この点についても前述のとおり計画どおり実施することができた. 以上より,H25年度においてはH24年度に残した課題も含め当初計画どおり実施することができ,さらにH26年度の計画の一部も完了している.よって当初計画以上に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度は,前年度までに得た知見に基づき,最適なまくらぎ配置について検討する.なお,平成26年度に一部実施予定としていた,軌道内の波動透過率に基づくまくらぎ配置の最適化については,平成24年度に概ね終了することができた.ただし,得られた配置は一定間隔区間の組み合わせによるものであり,共振の原因となり得る周期性をある程度保有している.そこで,まくらぎ位置のずれに関する確率分布を設計変数として,より振動低減に有効なまくらぎ配置を模索する.具体的には,ある確率分布に従うまくらぎ間隔を有する軌道を多数生成し,その下で動的応答解析を実施して,振動低減に有効な分布について検討する.また,鉄道では振動に加え騒音も重要な評価項目とされている.そこで,走行車輪・軌道連成解析を通して,まくらぎ間隔が既存の軌道のバラツキを有する場合と,得られた最適配置を有する場合を対象に,音圧レベルの低減効果についても検証し,振動・騒音低減に対する効果を総合的に調べる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
2014年3月15日に開催された鉄道関連の発表会(NU-Rail2014,東京大学で開催)において,研究成果の発表を行った.その際に大学院生1名を帯同したが,旅費は4月以降に支払われた.そのため,2013年度は6万円程の未使用額が発生したもので,事実上は年度内にほぼ全額使用済みである. H25年度は計画どおり実施することができた.なお,研究費を次年度に繰り越すこととはなったが,実質的にはほぼ計画どおりの執行となっている.よって,次年度についても当初計画に沿って使用する.
|