構造物の腐食現象にタイする現在の対策は,海岸線からの距離に依存した簡単な飛来塩分量の予測をもとにしたものである.しかし,実際の構造物の腐食状況は同じ構造物でもその部位に大きく依存しており,維持管理の観点からはこの局所性をあきらかにしておくことが望ましい.この問題に対しては,個々の構造物の近傍について流体解析をもとに浮遊塩分粒子の構造物表面への付着を検討していくのが合理的である.これには,流体解析の初期境界条件のひとつとして空気中の塩分粒子濃度を知る必要がある.かんレンして,これまで広く用いられておりデータの蓄積のある土研式タンク法やドライガーゼ法による「飛来塩分量」がある.しかしこの「飛来塩分量」は上記の流体解析の初期境界条件としては必ずしも適切ではく,「飛来塩分量」と区別された「浮遊塩分量」あるいは「浮遊塩分濃度」が適切な指標である. 今年度は昨年度に引き続きフィルター法(JIS Z 8814)による浮遊塩分濃度の観測と平行して,これまでのデータの蓄積の大きく長期の観測が容易なドライガーゼ法(JIS Z 2382)による観測も行った.そして,湿性沈着や詳細な地形データ等を考慮した気象解析による浮遊塩分濃度の精度およびドライガーゼ法の観測結果との関係等について考察した.その結果,気象解析による精度は腐食環境を実用的に推定できる程度に高いが,ドライガーゼ法の捕捉率には幅があり浮遊塩分濃度および風との単純な関連性の存在はあきらかにではなかった.
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