本年度は、表面塩化物およびさび除去後の再腐食過程を2つの腐食環境下において検討した。曝露試験に用いた試験片はカップワイヤ-、グラインダー、炭酸ナトリウム等での除去処理をおこなった後に、飛来塩分の影響を受けない箱内および高飛来塩分環境である沖縄県の沿岸の2箇所で曝露した。その結果、平均さび厚が200μm程度の腐食耐候性鋼材に対し、炭酸ナトリウム処理をおこなうことで耐候性鋼材の腐食の進行を抑制できることが観察された。一方、さらに腐食が進行した耐候性鋼材に対して炭酸ナトリウム処理をおこなっても腐食の進行を抑制できないが、条件によって炭酸ナトリウムは表面塩分量を減少させる。腐食の進行を抑制できない原因として、耐候性鋼材に腐食促進因子である塩分が多量に含まれていることが考えられる。そこで、腐食が進行した耐候性鋼材において、さびを取り除くための素地調整を施し、炭酸ナトリウム処理をおこなうことで耐候性鋼材の腐食進行を抑制できると考える。耐候性鋼材の腐食を抑制する効果が大きいものは、グラインダー処理をおこない、処理液を含ませたガーゼを2~3日間設置し、水拭きをおこなうことである。しかし、実橋梁での補修を想定した腐食耐候性鋼材の炭酸ナトリウム処理をおこなうにあたり、ガーゼの設置ははけによる塗布に比べ困難である。また、はけによる塗布はガーゼの設置に比べ腐食抑制効果は小さいものの、素地調整のみに比べ腐食抑制効果は十分に期待できる。そこで、実橋梁での補修では炭酸ナトリウム処理方法にはけによる塗布を提案する。
|