研究課題/領域番号 |
24560587
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
白旗 弘実 東京都市大学, 工学部, 准教授 (40298013)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 橋梁 / 腐食 / 鋼・コンクリート界面 / 非破壊検査 / 赤外線サーモグラフィ / 超音波探傷試験 |
研究概要 |
社会基盤の老朽化の問題が指摘されてきている.最近になって,社会資本の老朽化に伴う事故も報告されている.その中の一つに2007年に,コンクリート床版を貫通した斜材をもつ鋼トラス橋において,コンクリート床版内で斜材が腐食し切断した事故がある.破断のメカニズムとして,コンクリートと斜材の間に剥離が生じ,雨水の滞留により,鋼材が腐食していったことが考えられている.トラス斜材の腐食はコンクリート内部にあるので,肉眼では確認することがきわめて難しくなる.何らかの非破壊検査手法を適用せざるを得ない.本研究の目的はコンクリート部材に埋め込まれた鋼材の腐食を検出することである. 非破壊検査手法の中でもここでは特に,赤外線サーモグラフィ,超音波探傷法,渦流探傷法の適用をこころみた.赤外線サーモグラフィ法は非接触で,一度に広範囲の検査ができること,表面のみを検査できることが特徴である.赤外線サーモグラフィは大きくアクティブ法とパッシブ法に分けられる.熱源を強制的に加えるアクティブ法を適用することとした.実験に先立ち供試体を作製した.供試体は約20cm立方の型枠を作り,中に鋼板を設置し,フレッシュコンクリートを流し込むことで作製した.鋼板はコンクリートとの付着を切り離すため,厚さ0.1mmオーダーのグリスを塗ったアクリル板を置き,硬化後に引き抜くことで界面き裂を模擬した.実験時には室温は20℃程度であったが,温度70℃程度の熱水を使うこととした.熱水を鋼・コンクリート界面にしみこませるようにして,温度差を与えることをこころみた.その後,界面付近の温度を1分おきに計測した.界面き裂幅が大きくなるほど,温度低下が遅くなることが示された.温度低下の割合は界面き裂がない場合で,0.3℃/分,き裂幅が1.0mmで0.1mm/分程度であった.この結果より,界面き裂の検出の可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一年目に赤外線サーモグラフィ,二年目に超音波探傷という流れで,実験を行う予定であった.実際に,25年度からは超音波探傷試験を行うので,予定どおりであるともいえる.しかしながら,赤外線による検査が思ったほど進まなかったので,25年度も継続して行うつもりである.これがやや遅れていると判断した理由である.思ったほど進まなかった原因としては,熱の与え方,計測箇所および計測スケールなどの設定にさらに改善の余地があると思われるからである.コンクリートと鋼の熱伝導率に差があるので一般的に難しいとされているが,既往の文献をもっと詳細に調べて,改善策を検討していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度からは超音波探傷試験も行い,外部からは肉眼では見ることのできない箇所の検査へと進める予定である.既往の研究では,板波を用いた検討例があるが,板波は多数のモードが発生するので,波形からの解釈が難しくなる面がある.当該研究では,コンクリート床版厚は20cm程度であり,それほど,長い距離ではないので,SV波およびP波による斜角探傷も適用する予定である.斜角探傷においては,可変角操作のできる探傷装置を使用するつもりである.腐食による断面減少部があったとしても,腐食初期では薄いと考えられ,入射角度にかなり敏感となると思われる.赤外線法についても平成25年度は継続して検討をしていく予定である.温度差の与え方に工夫が必要であることは明らかであるが,水に浸透しておくなどして降雨状態と同様の条件を与えられるようにする必要があると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は供試体の作製で思ったほど費用がかからなかったので,繰り越し金が約20万円となった.平成25年度は超音波探触子(センサ)の購入を予定している.超音波センサは周波数,入射角度,縦波,横波といった波の種類などで用途が分けられているが,繰越金を超音波センサの購入費用に充てることにより,より多くの条件を検討することができると考える.
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