研究概要 |
鋼製橋脚の隅角部を模擬した供試体を製作し,実橋において発生応力が高く,完全溶け込み溶接が要求される梁・柱交差部に溶接未溶着を導入し,定振幅変位載荷および1サイクルごとの漸増変位振幅繰り返し載荷実験および解析を実施した. 実験では,未溶着高さの違いが延性破壊の特性に大きく影響することが明らかにされた.1)未溶着高さa=0, 2mm(板厚に対する断面欠損率0~16%程度)の供試体では,フィレット上端部でき裂が発生し,未溶着高さa=5, 8mm(板厚に対する断面欠損率42~67%程度)の供試体では,溶接未溶着部からき裂が発生した.2)き裂発生時期の比較において,未溶着のない供試体(a=0mm)と未溶着のある供試体a=2, 5, 8mm)を比較すると,き裂発生時期が最大で4半サイクル異なっており,未溶着の有無によるき裂発生時期の違いが確認された.3)一方,未溶着のある供試体(a=2, 5, 8mm)では,き裂発生時期に大きな違いがみられないものの,き裂進展状況において,未溶着部から破壊する供試体とウェブ板母材から破壊する供試体とでは大きく異なり,未溶着高さa=5, 8mmの供試体では急激にき裂が進展していることが確認された. 解析では,溶接未溶着部の有無および溶接仕上げ性状による弾塑性挙動の差異を,ソリッド要素による弾塑性有限変位FEM解析で検証を行った.また,損傷度評価指標Dによる延性き裂発生点の評価を試み,溶接未溶着高さや溶接仕上げ性状の違いによる挙動の比較を行った.基本メッシュサイズを2mmとした解析により算出したひずみを用いて算出した損傷度評価指標Dによっても,き裂発生時期は1~2Half Cycle程度の差であり,概ね本解析にて延性き裂発生時期を推定できた.
|