本研究では,カオス信号入力に基づく構造異常診断法および非接触変位場計測に基づくき裂同定法を基礎として,健全性評価の際に,事前に判定基準を必要とせず既設構造物の損傷を即時に同定するベースラインフリー型異常性診断法の開発を試みた. カオス信号入力に基づく異常診断法では,入出力情報から融合粒子フィルタを適用することで,層剛性を同定することに成功した.ただし,損傷を仮定した層の剛性を過剰に推定し,本来の剛性よりも下回る値を算出した.一方,画像相関法に基づく異常診断法では,1次モード形状の連続性をフラクタル次元解析により評価することで,健全時情報を必要とすることなく損傷位置が同定されることを明らかにした.
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