研究課題/領域番号 |
24560590
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丸岡 晃 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30310973)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / NURBS / Bスプライン / アイソジオメトリック解析 / 特性ガラーキン法 |
研究概要 |
平成24年度は、本研究の最初の段階として、非圧縮性ナビエ・ストークス問題に対する高精度な数値流体解析手法の開発を行った。本開発手法は、流速場と圧力場の近似関数の取り扱いに、NURBS基底関数に基づく混合型近似手法を用いた。また、時間離散と移流の卓越した問題に対処するために、時間2次精度化が可能な特性ガラーキン法を用いた。本開発手法の主な特徴は、次のようにまとめられる。①NURBS基底関数を用いているため、関数近似能力および形状表現能力に優れている。②特性ガラーキン法を用いているため、時間離散に対して無条件安定のスキームとなる。③混合型近似手法および特性ガラーキン法の共通の特徴から、安定化のための人工的なパラメータを必要とせず、解くべき連立一次方程式の係数行列が対称となり、高効率な計算が可能になる。以上のような特徴から、本開発手法は本研究目的に合致する高精度かつ高効率な手法であるといえる。ところで、混合型近似手法には、下限上限条件と呼ばれる条件を満足するような流速場と圧力場に対する近似関数の組み合わせが必用であり、いくつかの選択肢が考えられる。本研究では、Sangalliらによって提案されている二つの方法に着目し、有効性を明らかにした。第一の方法は、圧力に対する要素を一様に細分化したものを流速に対する要素とするサブグリッド要素と呼ばれる組み合わせである。この方法によれば、流速場と圧力場に対して基底関数で表現できる最大の連続性を維持できるという特徴を有する。第二の方法は、Bスプラインによって拡張されたRaviart-Thomas要素と呼ばれる組み合わせである。この方法によれば、任意の点で発散フリーの流速場が得られるという特徴を有する。それぞれ優れた特徴があるため、問題によって使い分けることが有効である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のベースとなる非圧縮性ナビエ・ストークス問題に対する数値流体解析手法の開発については、「9.研究実施の概要」に記載したように十分に進展することができたと考えている。ただし、現状では研究遂行の効率性を考え、2次元流れ場のみによる検討であるため、今後、3次元流れ場への拡張が必要である。また、平成24年度の研究において扱った解析領域は、基本的なベンチマーク問題(キャビティ内流れ)が中心であったことから、矩形領域のみであった。任意の境界形状を有する解析領域に対する検討について不十分な面があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、本開発手法の実問題に対する適用を可能にするため、3次元流れ場への拡張と任意の境界形状を有する解析領域に対する検討が必要になる。3次元流れ場への拡張については、近年の高速計算機において主流となっているメニーコアプロセッサを用いた計算高速化を検討する必要があると考えている。一方、任意の境界形状を有する解析領域に対する検討については、境界非適合メッシュによる方法の適用を考えている。本開発手法のようなスプラインを基底関数とする方法では、基本的に単変量の基底関数のテンソル積により多変量の基底関数が構成される。このとき、パラメトリック空間においてメッシュは直交格子となる。このような手法における物体形状を表すためのメッシュは,矩形のパラメトリック領域(パッチ)から物理領域へのBスプラインやNURBS等によるジオメトリマッピングによって得られる。しかしながら、単一のパッチで表現できる領域形状には制限があり、複雑な境界をもつ領域形状を扱うためには複数のパッチが必要である。当然、解析もパッチ間の接続を考慮しなければならず、このことは必ずしも容易ではない。これに対し、有限要素法や有限差分法では、必要な解析対象を覆うバックグラウンドメッシュを作成し、領域内において何らかの方法によって境界を表現する、というような境界非適合メッシュによる方法も提案されており、本開発手法においても、この方法の適用が可能であると考えられる。また、この領域内の境界にも、NURBS曲線・曲面を用いて表現すれば、CADとCAEの融合性を備えた手法の構築が可能であると考えられる。そこで今後の研究では、流れ場の中に置かれた物体周りの流れのような問題を高精度に解くことを目的として、本開発手法に領域内の境界の組み込み手法を構築することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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