研究課題/領域番号 |
24560590
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丸岡 晃 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30310973)
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キーワード | 数値流体力学 / NURBS / Bスプライン / アイソジオメトリック解析 / 特性ガラーキン法 / ラグランジュ未定乗数法 / ニッチェの方法 |
研究概要 |
本研究の目的は、CADの形状表現に用いられるNURBS(非一様有理Bスプライン)基底関数を流体解析における境界・領域の形状表現および流速、圧力等の未知関数近似に適用し、移流の卓越する流れに対して特性曲線法に基づく特性ガラーキン法を適用した新たな流体解析手法を開発することである。 平成24年度は、非圧縮性ナビエ・ストークス問題に対して、NURBS基底関数を用いた混合型Bスプライン近似に基づく時間2次精度の特性ガラーキン法を開発した。本開発手法の有効性を検討するために扱った問題は、矩形の解析領域の基本的な2次元流れ場におけるベンチマーク問題であり、任意の境界形状を有する解析領域の問題に対する検討が不十分であった。そこで、平成25年度は、流れ場の中に置かれた任意の境界形状を有する物体周りの流れのような問題に適用することを目的として、必要な解析対象を覆うバックグラウンドメッシュを作成し、領域内において高精度に物体境界を組み込む手法を構築した。 具体的には、領域内の境界上の流速を拘束条件として取り扱い、ラグランジュ未定乗数法を適用する。また、領域内における物体境界の表現およびラグランジュ乗数の近似には、NURBS基底関数による近似関数空間を適用する。さらに、ラグランジュ未定乗数法を導入した場合に生ずる不安定性に対しては、ニッチェの方法によって安定化を図る。 本開発手法は、1.NURBS曲線・曲面によって物体境界を表現しているので、CADとCAEの融合性を備えている、2.移動境界問題に対して、メッシュを再構築せずに解析を行うことができる、という特徴を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
任意の境界形状を有する解析領域に対する検討については、「9.研究実施の概要」に記載したように、一定の進展を得ることができたと考えている。しかしながら、現状では研究遂行の効率性を考え、2次元流れ場のみによる検討であるため、今後、3次元流れ場への拡張が必要である。また、3次元流れ場への拡張については、高速計算機の利用が必要不可欠であり、平成24年度にメニーコアプロセッサー(インテル社Xeon Phiコプロセッサー)を有する高速計算機を導入し、平成25年度に本開発手法に対するメニーコアプロセッサー向けの並列分散プログラミングを行ってきたが、大幅な計算高速化が図られなかった。この理由の一つにはメニーコアプロセッサーへ計算負荷を分散させる際のオーバーヘッドが予想以上に大きかったことである。今後は、アルゴリズムの再検討や他の計算機環境で効率化を図る等、改善しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に推進すべき課題は、本開発手法の実問題に対する適用を可能にすることであり、この課題の実現のために、計算高速化とCADとの融合を目指した検討が必要であると考えている。 計算高速化については、「11.現在までの達成度」に記載したように、メニーコアプロセッサーによっては必ずしも有効な成果が得られなかった。そこで、平成25年度末に計算処理能力の高いマルチコアプロセッサーを有する高速計算機を導入し、この計算機を有効に利用できるような本開発手法に対する並列分散プログラミングが必要であると考えている。一方、近年の高速計算機の主流の一つであるグラフィックハードウェアを利用した高速計算機の利用も他の選択肢として考え、新たにグラフィックハードウェアを利用した高速計算機を導入し、本開発手法に対する有効性を検討する予定である。 CADとの融合を目指した検討については、NURBSモデラー(既存のソフトウェア)からのメッシュ作成が必要になると考えている。平成25年度に検討した領域内に物体境界を組み込む手法を用いれば、物体境界のみのデータさえあればよいので、NURBSモデラーのデータをそのまま利用できる。ただし、NURBSモデラーでは通常、最小限の自由度で物体境界を表現しているため、解析用にメッシュ数を適切に増やす必要があると考えている。
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