研究課題/領域番号 |
24560592
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
酒造 敏廣 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90137175)
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研究分担者 |
山田 宰 和歌山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30550173)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鋼製ラ-メン橋脚 / はりのせん断崩壊 / 地震応答解析 / せん断パネルダンパー |
研究概要 |
(1)研究成果:水平地震動を受けて,柱基部とはり中間部で塑性変形が進行する門形ラ-メンの地震応答解析を実施した.まず,柱・はり間にブレース材を挿入してせん断力卓越区間を設け,抵抗せん断力を増したはり中央による履歴エネルギー分担について調べた.つぎに,箱形ばりはり中央部を汎用非線形構造解析ソルバーのFEMモデルに置換して,弾塑性有限変位解析プロセスを構築し,オンライン実験法に準ずる仮動的なラーメンの地震応答解析を通じて,補剛されたフランジプレ-トを持つ箱形ばりのせん断崩壊性状,及び,それがラーメン全体の復元力-変位関係に及ぼす影響を調べた.これらの結果から,箱形ばりがせん断座屈崩壊するラ-メンの地震応答の特徴をまとめた. (2)成果の具体的内容:以下のことが明らかになった.a)はりがせん断崩壊するとき,柱基部とはり中央のどちらが先行降伏するかによって,両者の履歴エネルギー分担の性状が大きく変動する.b)せん断崩壊する箱形ばりにおいて,フランジプレ-トの縦補剛材の曲げ剛比の変動(必要剛比の3~5倍の範囲)が柱基部の塑性変形性状や履歴エネルギー分担に及ぼす影響は小さい.c)箱形ばり中央がせん断座屈崩壊して抵抗せん断力の低下・変動が著しくなると,履歴エネルギーが低下し,はり中央部には,柱基部の塑性変形を抑えるエネルギー吸収部材としての効果を期待できない.d)このとき,はり中央部の履歴エネルギー分担の下限は,はり腹板の降伏点をせん断座屈応力に置き換えた塑性崩壊メカニズムによって評価できる. (3)成果の意義、重要性等:箱形ばり部材中央のせん断座屈崩壊が鋼門形ラ-メンの柱基部の地震時損傷を軽減することがわかった.従来のラ-メン橋脚の耐震設計法では,はり部材の先行降伏をとくに意識したものではなかったが,今後,橋脚全体の損傷を小さく留めるための崩壊パターンとして検討する価値がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画したとおりに,ほぼ順調に研究が進んでいる.自己点検すると,以下のとおりである. (1)研究計画に記した地震応答解析で用いた2つの解析モデル,すなわち,(解法1)ブレース材を組み込んだ門形ラ-メンの剛体バネモデル,(解法2)汎用FEMを利用した門形ラ-メンの全体モデルは,はり中央がせん断崩壊するラ-メンの地震時終局挙動を把握する上で有効である. (2)ラ-メンの地震応答解析に必要な解析プログラムの開発等:研究に利用しているPCのOSがWINDOWS8になって,従来使っていたFORTRANコンパイラーが動作しなくなり,研究に使うプログラムの細かい保守・点検が難しくなった.平成25年度に新規にソフトウェアを導入することを考えたい. (3)汎用ソフトを利用した数値解析では,材料の応力-ひずみ曲線(構成則)の仮定において,ひずみ硬化をどのように見積もるかによって,数値解析結果がかなり変動することがわかった.この点は次年度の検討事項としたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初の研究計画に従って,以下の方針で研究を推進する. (1)柱・はり間に挿入するブレース材の設計と箱形ばり中間部の補強について:初年度と同様な数値解析を行い,以下の2点に着目して,柱・はり間に挿入するブレース材の設計と箱形ばり中間部の補強について検討する.a)ブレース材の設計:ブレース材の目的は,はりのせん断力を所定の値まで引き上げることである.これは,市販のH型鋼に相当するものを利用することで解決できると考えている.b)箱形ばり中央の補強:せん断耐力を引き上げることは,腹板を縦横に補剛し,かつ,フランジ・プレ-トにカバープレートを取り付けること等で対処できると考えている. (2)まとめ:鋼製ラ-メン橋脚の箱形ばり中央部をせん断パネル・ダンパーとして機能させるために必要な耐震補強法を提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
1)平成25年度に使用する予定の研究費が生じた状況: ラ-メンの地震応答解析に必要な解析プログラムの開発に利用しているPCのOSがWINDOWS8になって,従来使っていたFORTRANコンパイラーが動作しなくなった.そのため,数値解析プログラムの細かい保守・点検・管理が難しくなった.これは当初の計画で予期していなかった.このような状況で,本研究の遂行上十分な能力があるFORTRANコンパイラ・ソフトウェアの選定に時間がかかり,研究費に未使用分が生じる結果となった. 2)平成25年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画: 平成25年度直接経費(計600千円)+24年度未使用額(計586千円)は(物品費)675千円,(旅費)181千円,(謝金)50千円,(その他)280千円の内訳で支出する予定である.物品購入の主たるものは,数値計算用ソフトウェア,データ保存用ディスク等である.
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