研究課題/領域番号 |
24560592
|
研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
酒造 敏廣 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90137175)
|
研究分担者 |
山田 宰 和歌山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30550173)
|
キーワード | 鋼製ラ-メン橋脚 / 地震応答 / 柱の軸力変動 / はりのせん断崩壊 / せん断パネルダンパー |
研究概要 |
(1)研究成果:1,2層門形ラ-メンの地震応答解析を行い,種々なラ-メンの崩壊メカニズムを想定して,柱の軸力変動幅と損傷がどの程度になるかを調べた.数値解析では,ラーメンを平面骨組にモデル化した動的解析(解法I)と復元力特性を仮定した1質点バネモデルの動的解析(解法II)を行った.これらの解析を通じて,はり中央がせん断崩壊するラ-メンの地震応答とそのときの柱基部の軸力と損傷に関わる累積塑性ひずみの変動性状を調べた.なお,数値解析モデルでは,隅角部付近とはり中央付近の降伏点を変動させることで,はり・柱間にブレース材を挿入してはり中央にせん断変形が集中するパターンを再現している. (2)成果の具体的内容:以下のことが明らかになった.a)はり中央のせん断降伏が早期に起こると,柱に伝達されるはり部材の抵抗せん断力が抑えられ,塑性断面性能の大きな隅角部腹板が降伏する場合に比べて,柱の軸力変動が小さくなる.b)このとき,柱の塑性ひずみの累積量も小さくなり,地震時の損傷が軽減できる.c)はり中央が早期にせん断崩壊するときのラ-メンの地震応答の特徴は,復元力-変位関係に2次剛性区間を設けた1質点系モデルで説明できる. (3)成果の意義、重要性等:はり中央にせん断変形が集中すると,柱基部の損傷をかなり軽減できることがわかった.ラ-メンが崩壊メカニズムを呈するときの柱の軸力変動をどの程度に抑える必要があるかを耐震設計でどのように考えていくかは今後の重要な検討課題である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に研究が進んでいる.自己点検すると,以下のとおりである. (1)研究計画に記したはり・柱間のブレース材の目的ははり中央にせん断崩壊させることであった.実績調査を踏まえると,ブレース材を挿入せずとも,隅角部付近の簡単な補強(カバープレートの溶接等)でも,はり中央のせん断崩壊を容易に起こせることがわかった.この点は,最終年度で,もう少し検討したいと考えている. (2)研究に使用している汎用FEMソフトはWINDOWS XP上で稼働しているが,XPの利用については各方面でセキュリティ上の警告が出ている.そのため,研究に使っているPCを新規に入れ替える必要がある.最終年度で検討する必要があると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は,前年度までの成果を踏まえて,門形ラ-メンの地震応答解析も実施してデータを補い,鋼製ラ-メン橋脚の箱形ばり中央部をせん断パネル・ダンパーとして機能させるために必要な耐震補強法についてまとめを行う.すなわち, (1)はり中央部のせん断力卓越区間を有する門形ラ-メンにおいて,柱基部の塑性変形を抑えるためには,柱の軸力変動幅をどの程度に抑える必要があるのかを検討する. (2)柱の軸力変動幅=はり中央のせん断耐力になるので,柱・はり間に挿入するブレース材やカバープレートによる補強により,はり中央がせん断崩壊するための設計について検討する. (3)以上から,地震動を受ける門形ラ-メン橋脚の柱の損傷を軽減するための設計法について,研究のとりまとめを行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究で利用している汎用FEMソフトを組み込んだPCのOS(windows XP)がセキュリティ上の問題で利用できなくなる可能性があることがわかった.25年度の予算残では新規PC導入が難しかったため,一部を未使用のまま繰り越して,26年度予算と合わせて新PC,OS導入を計画した.これが研究費に未使用分が生じる結果となった理由である. 25年度で繰り越した研究費と26年度研究費の一部を合わせて,新規PC導入とそれに伴う汎用FEMソフト(MARC)の契約料更新に充当する計画である.
|