(1)研究成果: まず,1,2層門形ラ-メンを平面骨組にモデル化して動的弾塑性地震応答解析を実施した.変断面のはり・柱部材の種々な箇所で塑性変形が起こる崩壊パターンを想定し,柱基部の損傷に及ぼす軸力変動量について調べた.つぎに,軸力変動下で繰り返し曲げを受ける鋼箱形柱基部の弾塑性有限変位解析を行い,軸力変動下で局部座屈する柱基部の変形性能について考察した.以上の結果から,はり中央をせん断パネルダンパーとして利用する点について結論を導いた. (2)成果の具体的内容: 柱の軸力変動は,塑性断面性能が大きい柱の上下端やはり端部で塑性変形を呈するときに最も大きくなり,はり中央で塑性せん断変形が起こるときに最も小さくなる.また,定鉛直荷重に軸力変動を加えると,柱の軸方向圧縮力は,最大で全断面降伏荷重のおよそ0.35倍程度になることを耐震設計で想定しておく必要がある. (3)成果の意義: はり中間部で塑性せん断崩壊が起こると,柱の軸力変動が抑えられるという点で,はり中間部は一つのダンパー(ヒューズ部材)として利用できる.しかしながら,はり・柱間をブレース材で補強するとはり部材としてのせん断耐力が上昇し,柱基部の軸力変動が大きくなる点で耐震上好ましくない.したがって,既存橋脚においてはり中央をダンパーとして用いる場合,エネルギー吸収が期待できない一種のヒューズ部材としての利用に留めるべきである.
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