研究課題/領域番号 |
24560593
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人鉄道総合技術研究所 |
研究代表者 |
大屋戸 理明 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 構造物技術研究部, 主任研究員 (10425910)
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研究分担者 |
金久保 利之 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (90261784)
八十島 章 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 助教 (80437574)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腐食 / コンクリート構造 / 強度 |
研究概要 |
本研究は、鉄筋コンクリート(RC)部材中の鋼材の腐食が構造性能に及ぼす影響を明らかにするため、腐食鉄筋が周辺のコンクリートに損傷を生じさせる現象に着目して、これにより圧縮耐荷機構が崩壊する現象を解明し、評価することを目的とする。 平成24年度は、既往の腐食したRC部材の曲げ載荷試験の事例を整理し、耐荷メカニズムの検討を行った。このうえで、長期暴露により腐食劣化が生じた試験体を用いて曲げ載荷試験を実施し、圧縮耐荷機構の崩壊過程の把握を行った。 既往の事例の整理の結果、圧縮鉄筋が腐食した場合に靭性が小さくなる事例があったが、圧縮鉄筋が配置されていない場合はそのような例はなく、部材降伏後も荷重を保持したまま変形が進行し、靭性を発揮していることが確認された。これは、既往の研究が主に引張鉄筋の腐食にのみ着目されているためであり、本課題の重要性が再確認された。 この結果を踏まえ、圧縮鉄筋の腐食によって靭性が低下する現象を再現するため、曲げ載荷試験を実施した。筆者らは過去に、塩分を導入し20カ月および12年の長期暴露を行って劣化させたRC部材を用いた実験を実施してきたが、今回新たに26年の長期暴露を行ったRC部材を用いて静的曲げ載荷試験を行った。載荷試験の結果、本試験体は、暴露12年時のどの試験体よりも耐力が小さかった。引張鉄筋は破断しなかったが、部材が降伏し最大荷重を示して以降、暴露12年時に最も変形能が小さい試験体と同等の変位時点で荷重低下が生じた。破壊状況については、等曲げ区間のコンクリートが圧縮側のみならず側面の大部分に至るまで剥落し、かつ圧縮鉄筋も座屈し、等曲げ区間に集中的して損傷を生じる結果となった。以上のように、圧縮鉄筋の腐食によって曲げ耐力が低下し、かつ靭性を著しく低下させる現象を再現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、研究の初年度である平成24年度は、腐食したRC部材の載荷試験を行い、曲げ力を受ける場合の圧縮耐荷機構の崩壊過程を把握することとしている。本研究では、確実に圧縮域のコンクリートに破壊を生じさせるため、26年の長期自然暴露により劣化させた試験体を用いた。載荷試験の結果、当初の目的どおり、圧縮鉄筋が腐食したRC試験体の圧縮耐荷機構の崩壊過程を観察することができた。 当該試験体の載荷前の劣化状況については、特に圧縮側の面に広く分布する軸方向ひび割れと、側面の引張鉄筋に沿う軸方向ひび割れが顕著であった。ひび割れ幅は目測で5mm程度と大きく、浮き・剥落も全体に亘り生じていた。一部のかぶりは脱落寸前であり、触れるだけでかぶりコンクリートが動くためにひび割れ幅の計測ができなかった。 また、研究計画では、2台のデジタルカメラを用いて画像を取得し、数値処理によって対象コンクリート表面の鉛直変位量を算出することで、圧縮側コンクリートの崩壊過程を数値化する予定としている。これについては、予定通り解析用の画像を取得できており、引き続き数値解析のためのデータ整理作業を実施中である。また、塩害や中性化など、鉄筋腐食につながる劣化因子毎に腐食性状(腐食後の断面形状)が異なることを勘案し、当初の研究計画では予定していなかったが、劣化因子と腐食性状との対応を確認することを目的として、コンクリートの含有塩分量の測定分析を行った。 以上のように、暴露試験体を用いた載荷試験の結果、当初の計画どおり、圧縮鉄筋が腐食したRC試験体の圧縮耐荷機構の崩壊挙動を把握できたが、劣化状況の把握については、載荷前のひび割れ状況の定量的な確認が十分に実施できなかった一方で、当初計画になかったコンクリートの含有塩分量の測定分析を実施できたので、総じて概ね順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度に把握した腐食したRC試験体の崩壊過程をより詳細に把握するため、2台のデジタルカメラにより取得した画像を用い、数値処理によって対象コンクリート表面の3次元変位量を算出する。これにより、圧縮面と側面のコンクリートの崩壊過程を数値化し、評価を行う。一方、当該試験体における腐食した鉄筋の力学性状を詳細に分析するため、鉄筋を採取して除錆を行い、3Dスキャナによる鉄筋の断面形状の計測作業を実施する。この結果を用い、微小区間における発生ひずみの積算によって、評価区間における鉄筋の力学性状を推定する。これら2つの調査結果を用い、平面保持の仮定等、既存の解析コードをキャリビュレーションの上で適用して、等曲げ区間におけるコンクリートの圧縮応力分布の把握を試みる。 一方、前年度に用いた腐食したRC試験体では、26年の長期暴露によるコンクリートの劣化が極めて顕著な状況であった。ひび割れ幅は目測で5mm程度と大きく、浮き・剥落も全体に亘り生じ、一部のかぶりは脱落寸前であるなど、外観上幾分極端なほどに劣化が進行していた。このため、必ずしも鉄筋の腐食によるひび割れに起因したものではないコンクリートの劣化による影響を考える必要があるとも考えられる。そこで、新規に作成したコンクリートに対して電食等により腐食を模擬した鉄筋を組み合わせるなど、鉄筋の腐食およびそれに関連する劣化のみを表現した模擬腐食試験体を作成し、力学特性の変化がどのように表れるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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