本研究は、鉄筋の腐食によって圧縮耐荷機構が崩壊する現象を解明し、評価することを目的とする。平成24年度は長期暴露試験体の曲げ載荷試験を実施し、圧縮耐荷機構の崩壊過程を観察した。平成25年度は前年度の試験体の三次元画像解析、電食したRC梁を用いた載荷試験、切削鉄筋単体の圧縮座屈試験ならびにRC単柱の中心圧縮試験を行い、腐食のみによって変形性能の低下が生じることを確認した。最終年度である平成27年度は、腐食とコンクリートの損傷の両方ではなく、いずれか片方のみを任意に変動させることを目的とし、切削とスリットを用いた模擬腐食試験体の載荷試験と三次元画像解析を行い、各因子の圧縮耐荷機構への影響を把握した。 模擬腐食試験体の載荷試験では、切削がなくスリットが少ない(長さが対象区間長の1/2程度)試験体は、曲げ圧縮降伏の挙動を呈した後、せん断スパンの最も載荷点寄りの圧縮領域で破壊した。スリットが少ない場合、変形能に影響を与えないことが示唆された。その他の等曲げ区間の圧縮領域で破壊した試験体については、座屈時に膨み出す方向や変形能は、スリットの方向や切削の位置との関連が希薄な一方で、スリットの量の影響を受ける可能性が示唆された。また、三次元画像解析の結果から、切削のみの場合はその場所を起点として全体に盛り上がるモードで座屈を生じる一方、スリットがある場合はいずれかの点に集中して鋭角的に立ち上がるモードで座屈を生じることが示唆された。 以上の研究期間全体を通じ、腐食に伴う圧縮耐荷機構の崩壊により曲げ耐力と変形能が低下する場合があること、スリットの設置や切削を行うことで人為的に圧縮耐荷機構の崩壊挙動を再現できること、三次元画像解析により圧縮耐荷機構の崩壊過程をトレースできること並びに断面解析により圧縮耐荷機構の崩壊を伴うはりの挙動を表現できることを確認した。
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