研究課題/領域番号 |
24560596
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福田 文彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80241355)
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キーワード | 地盤調査 / サンプリング / 乱れ / 応力解放 / 粘土 / 構造 / 土質試験 |
研究概要 |
この研究課題の申請書に記入した研究目的は次の通りである。「 室内試験から得られる自然地盤の応力~ひずみ~強度特性は,サンプリングによる乱れと応力解放のため,サンプリング前の特性とかなり異なっている。またサンプリングされた試料の試験結果からサンプリング前の特性を推定する方法もいろいろと提案はされているが,確固たる実験的/理論的な裏づけをもった推定法は未だに確立されていない。そこでこの研究では,自然地盤と同等な特性をもつ再構成粘土を準備し,この粘土を試料とする一連の三軸試験を行い,サンプリングの影響を受けていない状態の応力~ひずみ~強度特性と影響を受けた状態の特性の比較を行い,実験的な裏づけを持った合理的な応力~ひずみ~強度特性の推定法の確立を目指す。」 この目的の達成のために,一昨年度から3ヶ年の予定で研究を進めており,一昨年度と昨年度に達成した研究実績の概要は次の通りである。 1. 再構成粘土にセメントを添加することにより,自然地盤から採取される構造を持った粘土と同じような特性を示す粘土の作成法を確立した。この方法によって作成した試料が構造を持った自然粘土と同等な特性を持っていることを確認するために,定ひずみ速度圧密試験,一軸圧縮試験,および三軸圧縮試験を行った。 2. 三軸試験器を用いたサンプリングのシミュレーション試験を行い,サンプリングにともなう乱れや応力解放の影響によって,構造を持った粘土が本来有していた変形~強度特性が変化してしまうことを明らかにした。また,応力解放や乱れが試料の特性に与えた悪影響を取り除くために再圧密法が行われることがあるが,構造を持った粘土の場合,再圧密法を適用しても試料本来の特性が得られないことも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この研究では研究目的を達成するために次の三つの実験シリーズの実施を計画している。(1)構造を持った自然粘土と同様な挙動を示す室内再構成粘土の作製法を確立する。(2)サンプリングにともなう応力解放と乱れが,粘土の中~大ひずみ域ににおける変形特性に与える影響と強度におよぼす影響を明らかにする。(3)サンプリングにともなう応力解放と乱れが粘土の微小ひずみ域の変形特性におよぼす影響明らかにする。これら三つの実験シリーズの内,(1)と(2)についてはほぼ予定通り実験を進めているが,(3)については当初の予定より遅れている。そのため現在までの達成度の評価を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,応力解放と乱れの影響が,構造を持たない粘土と構造を持つ粘土で著しく異なることが実験的に明らになった。 すなわち構造を持たない粘土の力学特性は,有効応力状態と間隙比によってほぼ決まっており,乱れや応力解放によって間隙比や有効応力状態が変化するために,力学特性も変化してしまう。したがって構造を持たない粘土では,カムクレイモデルなど,有効応力と間隙比と力学特性を結びつけるフレームワークにもとづいて,ある程度,サンプリング前の試料の特性を推定することが可能であると思われる。それに対して構造を持った粘土の力学特性は,間隙比や有効応力の強い影響を受けるのはもちろんであるが,これまでの研究から,これら以外の要因の影響も受けていることが明らかである。そのため,構造を持たない粘土については,有効応力と間隙比のみのフレームワークでは,サンプリング前の試料の特性を推定するのは難しい。 そこで,今後,この研究では,これまでの行ってきた実験結果とこれから行う実験結果などを参照しながら,構造を持った粘土の力学特性を支配している現時点では明らかとはなっていないパラメーターの探索を行うとともに,構造を持った粘土の力学的挙動を理解するためのフレームワークの構築を行い,構築したフレームワークにもとづいて,応力解放と乱れを受けた試料の本来の力学特性を推定するための手法の開発を試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画では2台の微小変形三軸試験装置を製作し,これらを用いて地盤材料の微小変形領域の特性におよぼす応力解放と乱れの影響の調査を予定している。この予定にもとづいて平成24年度に一台目の装置を,平成25年度に二台目の装置を製作した。しかし平成24年度に製作した装置では,実験で必要とするデータを十分な精度で得ることができないことが判明した。そのため平成24年度に製作した装置のために購入したセンサー類を,平成25年度に製作した二台目の装置で使っているため,当初の予算で購入を予定していた二台目の装置用のセンサー類の購入を行っておらず,予算に余りが生じている。 2台目の微小変形三軸試験装置用センサー類購入のための予算を別のの三軸試験器の改造に充当することも考慮する。
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