研究実績の概要 |
本研究は,地震などによる地盤変形による送電鉄塔基礎の不等変位とそれに伴う鉄塔の損傷を定量的に評価し,損傷を受けた地盤-基礎-鉄塔-送電線連成系の耐風終局強度を合理的に評価することを目的とした.震害における典型的な地盤破壊形態を対象とし,鉄塔--架空線--風連成解析により,鉄塔に加わる風外力を評価し,地盤--基礎--鉄塔連成系の3次元・大変形・弾塑性解析により,地震後の鉄塔の耐荷・変形性能に関する研究を行った.鉄塔形式による耐荷挙動の違いを検討するため,電線支持形式の異なる2 種類の標準鉄塔(6621 型標準鉄塔(懸垂型)と6628 型標準鉄塔(耐張型))を取り上げた.塔体設計における強度計算で用いられている設計荷重の設定に準じた方法で,季節による外力特性の違いを考慮した高温季(H),低温季(L), 湿型着雪時(S) の3 種類の想定荷重条件を設定し,等価な節点荷重に換算した上で鉄塔の有限要素解析に導入した.さらに,地盤の弾塑性有限変形解析コードを開発し,地盤--基礎--鉄塔連成系のFEMモデルを開発した.このモデルに対して,広範な数値解析を行うことにより,その耐荷特性を明らかにした.
この成果は,「斜面近傍に位置する逆T字型送電鉄塔基礎の引揚支持力解析. 土木学会論文集C」として掲載に至っている.さらに,現在この成果を拡張的に発展させた「送電鉄塔の終局耐荷挙動に対する脚部不同変位の影響評価」,「 鉄塔-基礎-地盤全体系解析による送電鉄塔の耐荷挙動に対する基礎不同変位と地盤性状の影響評価」,「 斜面近傍に位置する逆T字型送電鉄塔基礎の圧縮支持力解析」という3編の投稿準備を終えつつある状況えある.大規模非線形FEM解析という困難な研究課題であったため,当初の研究成果は少なかったが,研究の終盤は大変実りが多いものとなった.最後に,当科研費への謝意を表したい.
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