研究課題/領域番号 |
24560599
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
若井 明彦 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (90292622)
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研究分担者 |
西村 友良 足利工業大学, 工学部, 教授 (00237736)
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キーワード | 火山灰質粘性土 / 凝灰質粘土 / 風化 / 軽石 / 地下水位 / 地震 / 含水比 / 地すべり |
研究概要 |
本年度は、前年度に実施した研究成果の継続検討として、火山由来土から成る斜面における地すべり発生リスクを評価するため、風化軽石を含む鋭敏粘土層の力学特性の把握とともに、こうした地質的特徴を有する斜面が関東地域でどのように分布しているかを広域的に把握することを目標とした、既存資料に基づく基礎的な検討を行った。 前年度には、東日本大震災による被災斜面として、栃木県および同県と隣接する福島県白河市での地震地すべり斜面をいくつか巡検し、地質構造を明らかにするための詳細な室内試験およびサウンディング(簡易動的コーン貫入試験)を実施したが、本年度は、これらの被災斜面での共通した傾向である、風化軽石に由来する軟弱かつ鋭敏な凝灰質粘土層の力学特性を調べるため、まず群馬県西部のある斜面において採取した同土の試料の室内土質試験を実施した。浅間山の噴火に由来する軽石から成る層とその風化した軟弱粘土層、ならびにそれらを包含する主体としてのローム層それぞれの力学特性および物理特性を調べ、風化軽石を多く含む軟弱粘土層では自然含水比が液性限界に極めて近いあるいはやや大きいことが鋭敏な力学特性を呈する原因となっていることなどを確認した。 一方、広域的な分析としては、東日本大震災時に栃木県の中東部に位置する喜連川丘陵において発生した地すべりを事例として、広域的に得られる地形・地質的な素因(具体的には、斜面を構成する地層の中にローム層あるいは風化軽石に関連する地層が含まれているか否か等)について分析することにより、それらと地すべりとの相関性を把握するための手順を検討した。このような手法を別の地域に適用する際の留意点を調べるため、試行的に南関東のある地域における同様の検討を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の最終的な目標は、火山由来地盤における地震地すべりを引き起こす鋭敏かつ軟弱な凝灰質粘土層の分布状況の把握と類型化である。関東地方だけを例にとっても地域ごとに分布する火山由来土の力学特性は大きく異なっており、最初からそれらを包括的に扱うことは極めて困難であるため、いくつかの現場を対象にして動的コーン貫入試験による軟弱層の検出の試行や鋭敏土の力学特性の詳細調査を実施してきた。 調査の結果得られたいくつかの知見は、こうした課題を解明するための重要な手がかりをもたらしている。例えば、未風化の軽石層の見かけの密度に比べて風化部の密度がやや大きいことから、地下水によって供給される層外からの細粒分が軽石粒子間の間隙を充填して、全体として不透水層を形成するとともに風化を促進し、全体として軟弱な粘土層を形成する過程が推定された。これらは軽石のハロイサイト化がもたらす力学特性の変化と関連していると考えられる。 一方、広域的な分析においては、東日本大震災時の被災斜面の分布との関係から、地すべりの直接的な原因となっているローム層とそれに含まれる鋭敏な粘土層(風化軽石など)について、層の堆積厚さとの相関性に基づく分析が有効であることが示唆された。こういった視点での分析も研究課題を遂行する上での重要な知見と考えられる。 関東地方を対象にした地震地すべりを誘発する火山由来軟弱土のいくつかの典型的な事例の分析を含め、広域的な検討との連携に向けてどのような視点での研究が必要であるか、効率的な考察を行うことができたことから、全体の研究計画の中での二年目の進展はおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度においては、個々の火山由来土の特性とそれらが斜面の災害リスクに与える関係とをさらに明確に分析するため、引き続き土質試験、現場調査ならびに文献調査などから検討を進める。前年度に検討作業を進めた、軽石の風化過程と広域的な分布特性に関する視点を踏まえ、防災科学的に見て有用な知見を得るために、地理情報システムを活用した因子分析を進める。 実際の防災対策に生かすためには、このような疫学的な検討だけでなく、具体的な微地形や地下水位を有する個別の斜面ごとの地震地すべりリスク評価への連続性が重要である。こうした高解像度の評価法に将来生かすことができるような、火山由来土の特徴把握と類型化が望まれる。そのために、有限要素解析などを援用した、地すべり機構解析の中での火山由来土の力学的役割の確認も並行して進めていく計画である。 いずれにせよ、二年目までの成果を踏まえて、より効果的な活動を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
少額の残金であるため、次年度に繰り越しました。 残額はきわめて少ないので、次年度の配分額と合わせて執行します。
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